スポーツ指導者・コーチとしての自信を高めて選手の成長を促す

選手が実力を十分に発揮する為に必要な要素は数多くありますが、その中でもプレーに対する自信はパフォーマンスの発揮に大きく影響します。

自信を持ってプレーしている選手とプレーに自信が持てない選手であれば、自信を持ってプレーしている選手の方が良いパフォーマンスを発揮しやすいものです。

では、選手の自信に対してスポーツ指導者としての自信はどうでしょうか?自分自身の指導を振り返ってみて、どれだけスポーツ指導者・コーチとして選手に自信を持って指導できているでしょうか?

スポーツ指導者・コーチとして自信が必要なことは分かっていても、どのようにして自信を高めればいいか悩んでいる方は、是非今回の記事の内容を参考にしてみて下さい。

今回は、スポーツ指導者・コーチとしての自信(コーチングエフィカシー:coaching efficacy)を高めるアイディアについてご紹介していきます。

コーチングエフィカシーとは?

コーチングエフィカシーの大元になっているのが、Positive Coaching Allianceの全米顧問でもあるアルバート・バンデュラ博士が提唱したSelf-efficacy(セルフエフィカシー:自己効力感)です。自己効力感は「ある特定のスキルに対する自信」と説明されています。

例えば、「仕事におけるコミュニケーション」や「プレゼンテーションの資料を作るスキル」や、ピアノで演奏する「ねこふんじゃった」、バスケットボールの「リバウンドでボールの跳ね返る位置の予測」などが特定の場面におけるスキルです。

このような「特定の場面に対するスキル」への自信を自己効力感と呼びます。この自己効力感を「スポーツ指導に対する自信」に置き換えたのが、コーチングエフィカシーです。

コーチングエフィカシーの研究の大元にもなったFeltzらの研究では、コーチングエフィカシーは、「コーチが選手の上達やパフォーマンスに影響を与えられる能力があると信じている状態」と説明されています(Feltz, 1999)。

コーチングエフィカシーが高いと、選手に対しても自信を持って関わることができますが、もし自分のコーチングエフィカシーが低いと、不安を抱えながら指導をしているような状態であるといえます。

指導経験と周囲からのサポートでコーチングエフィカシーが向上

過去の研究では、指導経験と周囲からのサポートを充実させる事がコーチングエフィカシー高める事につながると報告されています。

Boardleyの研究(2018)では、コーチとしての成功体験がコーチとしての自己効力感を高める大きな要素だと説明しています。

また、ここで説明する周囲からのサポートとは、学校や地域からの支援や支持、チームやスポーツ指導者・コーチへの保護者の理解などです。このような形で周りからのサポートを得られる事でコーチングエフィカシーが高まるとされています。

一方で、コーチ教育関係の過去の論文では、指導が難しくなってしまう要因として、下記の4つがあることが分かっています。

  1. スポーツ指導者・コーチが困った時に頼れるコーチ同士のつながりが無い
  2. 指導の相談相手(スーパーバイザー)がいない
  3. 指導経験が無いままいきなりスポーツ指導者・コーチとして現場に立つ
  4. 保護者の理解が得られない中での指導 

このようなことから、Boardleyの研究と同じように困った時のサポート体制と一定の指導経験の大切といえます。

もし、自分自身の指導に対して自信を持ちきれていないと感じたら、どのように指導経験を積み重ねていくか、どのように周囲からのサポートを得るかを考えてみるといいかもしれません。

コーチングエフィカシーを高める方法|コーチ同士のつながりを活用

 スポーツ指導者・コーチとして現場に立っている人の中には、アシスタントコーチとしての経験を積んだ後にヘッドコーチとして独り立ちした人もいれば、指導経験が全くない中でいきなり現場に立つことになった人もいるでしょう。

特に、指導経験がない中で現場に立つことになった人は、大きな不安を抱えたまま現場に立った経験があるのではないでしょうか。

下記では、そのような状況から少しでも不安を軽減して、自信を高められるような取り組みやアイディアを紹介します。

 自分自身の指導哲学や指導する目的を振り返ってみる

指導の目的を振り返ることは、直接的にコーチングエフィカシーを高める要素ではありません。しかし、自分が指導をする目的を明確にする事で自分の指導に賛同する人を集めやすくなり、自身の指導に対する理解を得やすい環境を作る事が出来ます。

スポーツ指導者・コーチの考えに賛同する保護者や選手を集めるには、「自分が選手を指導する理由は何か?」「指導を通してどのような成長を求めるのか」「チームに所属することで選手に求めること」など、共通理解してもらいたい事をはっきり伝えることが大切です。

その結果、自分自身の指導に理解を持ってもらいやすくなるので、選手や保護者とコミュニケーションを取る上でも意見や考え方の食い違いを少なくすることができます。 

今の指導で課題になっている事を書き出してみる

指導現場に立っている中で抱えている問題を解決できれば、それはスポーツ指導者・コーチとしての成功体験につながります。

解決したいことや今後チームを発展させていく上で必要なことをリストアップしてみましょう。その課題に対する取り組みが見つかれば、問題を解決して一歩前進するでしょう。

リストアップした取り組みを通して課題を1つ1つ解決していく事で、小さな成功体験を積み重ねて自己効力感を高めることが出来ます。

オンラインのコーチ同士のミーティングに参加してみる

オンラインセミナーやコーチ同士のコミュニティに参加して新しいつながりを持つのは、他のコーチからのサポートを得られやすいため子供の成長という意味においても効果的です。

自身が指導しているチームの課題は把握できても、一人だけで解決方法を探していると考え方が偏ったりアイディアが煮詰まってしまいがちです。

2020年9月現在、コロナウィルス の影響もありオンラインを活用した取り組みが数多く立ち上がっています。

オンラインコミュニティの中には、同じ種目のスポーツ指導者・コーチ同士が繋がって意見交換をする場もあれば、種目をまたいでスポーツ指導者・コーチ同士が交流を持って新しいアイディアを生み出すようなコミュニティもあります。

どのコミュニティでも、これまで横同士の繋がりが持ちにくくて悩んでいるスポーツ指導者・コーチ・コーチにとっては、新しいコーチ同士のつながりを構築するチャンスになります。

その時に、前もって自分の課題や知りたいことなどを明確にしておくと、グループの中で質問したり課題に対してアイディアを提供してもらいやすくなります。

保護者と話す場を設けてみる

チームによっては保護者会があるチームと、無いチームがあると思いますが、どちらのケースでも保護者とスポーツ指導者・コーチがお互いの考えを知り合える場を設けることで、保護者の理解を得やすくなります。

2020年9月現在は、実際に大勢で会う機会が制限されており難しい状況ではありますが、オンラインで話すだけでも十分な成果が得られると思います。

オンラインの場合だとお互いにざっくばらんに話す事が難しいので、スポーツ指導者・コーチとしての哲学や指導する目的を伝えて、保護者から質問を受けるという形を取るのも1つの方法です。

また、オンラインミーティング上でカジュアルに雑談をする場を設けるのも、保護者からの意見が聞ける良いきっかけになります。

まとめ

日本のスポーツ少年団や地域のスポーツクラブでは、お父さんお母さんコーチやボランティアでコーチをしている人が多いと思います。これは日本に限らずアメリカや諸外国でも同じような傾向があります。

経緯はさまざまですが、実際に子供たちに指導するなら、指導に対して不安なく取り組めるに越したことはありません。その為にコーチングエフィカシーを高めるための取り組みをすることは、指導の質の向上につながります。

他のスポーツ指導者・コーチの下で経験を積み、改めて自分の指導現場に戻るような取り組みができれば理想的です。しかし難しい場合は、指導現場の悩みや課題を解決しながら経験を積めば、コーチングエフィカシーを高めていくことができます。

また、コーチ同士のつながりを作るために、他のスポーツ指導者・コーチと知り合えるオンラインコミュニティに参加したり、保護者の理解を得られるような話し合える場を設けることも効果的です。

自分ひとりだけで頑張らずに、多くの人たちと協力しながら、スポーツ指導者・コーチとして成長し続けることで、自然にコーチングエフィカシーも高まるでしょう。ぜひこの記事を参考にして、選手と一緒に成長することを楽しんでみて下さい。

参考文献

Bandura, A. (1993). Perceived self-efficacy in cognitive development and functioning. Educational psychologist, 28(2), 117-148.

Boardley, I. D. (2018). Coaching efficacy research: learning from the past and looking to the future. International Review of Sport and Exercise Psychology, 11(1), 214-237.

Feltz, D. L., Chase, M. A., Moritz, S. E., & Sullivan, P. J. (1999). A conceptual model of coaching efficacy: Preliminary investigation and instrument development. Journal of educational psychology, 91(4), 765­–776.

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略歴 2007年東海大学理学部情報数理学科卒、2009年東海大学体育学研究科体育学専攻修了。東海大学大学院では実力発揮と競技力向上の為の応用スポーツ心理学を学ぶ。 2014年8月よりテネシー大学運動学専攻スポーツ心理学・運動学習プログラムに在籍。スポーツ心理学に加え、運動学習、質的研究法、カウンセリング心理学、怪我に対するスポーツ心理学など幅広い分野について学ぶ傍ら、同プログラムに所属する教員・学生達のメンタルトレーニングを選手・指導者へ指導する様子を見学し議論に参加する。 2016年8月より同大学教育心理学・カウンセリング学科の学習環境・教育学習プログラムにて博士課程を開始。スポーツスキルを効率良く上達させる練習方法、選手の自主性を育む練習・指導環境のデザインについて研究している。学術的な理論や研究内容に基づいた実践方法を用いて、日本・アメリカのスポーツ選手に対して実力発揮のメンタルスキルの指導とスポーツスキル上達のサポートも積極的に行なっている。