成功体験が結果につながる理由と方法

成功体験と聞いてあなたの過去にどのような体験がありましたか?沢山あってわからないという方はおそらく数多くの成功体験を積んできたのでしょう。

しかしながら、成功体験がごくわずかしかないという方も少なくないのではないでしょうか。

本記事では、成功体験を積む事の意味と成功体験を積むための方法をスポーツ心理学の知見から解説します。

成功体験は行動の質を高めて結果につながる

成功体験を積むことは、良い結果につながります。仕事であれ、勉強であれスポーツであれ、何に対しても成功体験を積むということはモチベーションを引き出し自信を高めて結果が良くなります。

スポーツであれば齊藤他1)は、練習の質に関する研究を行っています。この中で齊藤他は、スポーツ選手における練習の質に関する要因の1つとして練習環境があると述べています。

スポーツ選手に限らず、ポジティブな経験は思い返すことも多くなり、気づきを得やすくなります。スポーツ選手であれば、ポジティブな練習の体験を振り返ることによってパフォーマンスが高まります。

勉強であれば自分が出来た問題に対してはなぜ正解したのか理解が深まりますし、仕事であれば出来た仕事を思い出すことも多いでしょう。

ネガティブな体験はあまり思い出したくない人も多いですが、ポジティブな体験は思い出すだけでうれしくなりますよね。

つまり、成功体験は振り返りを促すため行動の質を高めて結果につながるのです。

成功体験はメンタルヘルス対策にも重要

成功体験はメンタルヘルスにおいても重要です。

なぜならば、小さなことでも成功体験として捉えやすい人は、ポジティブな考え方の人が多く、ポジティブな考え方の人ほど病気などを体験しにくいということが先行研究で報告されているからです2)。

ポジティブな考え方がもたらす精神的健康への影響としては下記の通りです。

ポジティブな考え方はストレスを減らす

ポジティブな考え方は、ストレスを減らします。

藤原2)の研究結果によれば、考え方とストレスには「心身疲労感」「自律神経の亢進」が関係していると指摘しています。

この結果では、ポジティブな考え方の人ほど課題失敗時・成功時どちらにおいても、この2つに対するストレスが少なかったことを報告しています。

つまり、何かをおこない、それが成功しても失敗してもストレスが少ないのはポジティブな考え方の人であったということです。

ポジティブな考え方は自信を養う

ポジティブな考え方は自信も養います。藤原2)の調査結果によれば、試験に対する自信を測定した時、ポジティブな考え方の人ほど試験の得点が高かったことを報告しています。

つまり、何事に対してもポジティブな考え方の人は自信を持ちやすいといえます。

ポジティブな考え方は抑うつへの対処も可能

ポジティブな考え方は抑うつ症状への対処も可能です。

藤原2)の研究結果によれば、ポジティブな考え方の人ほど、課題の成功時・失敗時どちらにおいても抑うつの得点が低かったことを示しています。

つまり、試験が出来なかったとしても、ポジティブな人ほど落ち込みにくいことがいえます。

ポジティブな考え方の人ほど結果・健康状態が良い

このように、ポジティブな考え方の人ほど結果も心理的健康状態も良い事が研究結果で明らかになっています。

コーチ向けではありますが、ストレスや健康問題に関する記事は下記の通りです。

ウェルビーイングとは?コーチにおける健康問題とスポーツ心理学のアプローチ

コーチのストレスマネージメントと自分自身の幸せ

成功体験とは「経験」

成功体験とは、文字通り物事を成し遂げた経験のことです。ただし重要なことは何を成功と捉えるのかという「考え方」です。

成功体験において重要な事はプロセス思考

成功体験において重要なことはプロセス思考です。

なぜならば、プロセス思考は、小さな成功体験を感じることができるためです。その結果として、大きな成功体験をも感じることができます。

具体的な例としてマラソンを思い浮かべてみましょう。マラソンは42.195km走りますが、初心者がいきなり42.195km走るということはほぼ不可能です。

しかし、42.195kmを小分けにして考えてみてはいかがでしょうか。最初の5km走ることをはじめに目標にするとします。これであれば初心者でも少し頑張れば達成できますよね。

次に10km、その次は15kmといったように距離を徐々に伸ばしていった結果として、42.195km走るという目標にすれば、小さな成功体験を積み重ねて大きな成功体験をすることが出来ると思いませんか?

このように、いきなり大きな目標に向かうのではなく、大きな目標に対するプロセス目標を設定して小分けに考える事によって、成功体験を積みやすくなります。

成功体験を積むために必要な成長マインドセット

成功体験を積むためには成長マインドセットという考え方が必要です。

なぜならば、この成長マインドセットは先にも述べた通り、プロセス思考を身に着けた時の考え方でもあるためです。

成長マインドセットが身に着くと挑戦を受け入れる姿勢がとれるようになったり、壁にぶつかったとしても諦めにくく、努力を達成への道を感じやすくなります。

また、批判から学ぶ姿勢他人の成功から学び意欲にできるようになった結果として、高い目標を達成することができます。

成長マインドセットを養う方法については下記の通りです。

最終的な目標設定を行う

成長マインドセットを養うためには、自分自身が目指す最終的な目標を設定しましょう。最終的な目標を設定することで、自分の最終的な到達点が見えます。

例えば、山登りで何山なのか登り始める人はいません。家の近くの小さな山でも、富士山でも、エベレストでも何かしら自分の登る山を決める必要があります。

現状を把握する

自分自身の現状を把握しましょう。現在の自分には、何が出来て何が出来ないのか、長所・短所は何かを把握することが重要です。

また、現状把握に加えて長所がどのようにしたら伸びるのか、短所をどのようにしたら補えるのかという点まで考える事がポイントです。

最終的な目標から逆算してプロセス目標を設定する

ゴールと自分の立ち位置が分かったら、次にどのようにして最終的な目標にたどり着くのかルートを決めましょう。

これも山登りに例えると、左右どちらへ進むのか、急な斜面を登るのか緩やかな斜面を登るのかによって、到達への速度は大きく異なります。

ただし、このプロセス目標に正解はありません。自分で試行錯誤しながら目標を設定してみましょう。

実行してポジティブな体験を積む

目標を立てた後は、実行して可能な限り多くのポジティブな体験をしましょう。

結果としてダメだったという行動であっても、次に活かすためのポイントや改善点といったことが見つかれば、それはポジティブな体験といえます。

単に「ダメだった。出来なかった」といった体験だけで終わってしまった場合には、単なる結果主義思考になってしまいます。

成長マインドセットを養うためには、いかにポジティブな体験を積めるかがポイントです。

ある程度の頻度でフィードバックを行う

ある程度の頻度でフィードバックを行いましょう。

自分にとって最終的な目標までどの程度到達しているのか、現状は何が変わったのか、実行方法をより良くするためにはどのようにしたらよいのか、などを振り返って紙に書いたり、言葉にしたりしてまとめましょう。

成長マインドセットを身に付けるには時間がかかる

成長マインドセットを身につけるためには時間がかかります。

なぜならば、今までみなさんが身に着けた結果主義思考は、長年かけて培った考え方でもあります。

長年かけて培った考え方を変えるためには、それ相応の時間が必要になります。

このように、成長マインドセットを身に着けるためには、長い時間が必要になります。

ここで重要なことは、意識的に成長マインドセットを身に着けるための行動をすることです。

まとめ

成功体験は、結果につながります。この成功体験を積む人の特徴として、成長マインドセットがありますが、成長マインドセットは、メンタルヘルスにも影響を及ぼします。

例えば、ストレス反応が少なくなったり、自信を養ったり、抑うつへの対処もできます。

この成長マインドセットを身に着けるための心理学的な方法としては、目標設定という心理的な技法が役に立ちます。

最終的な結果に対する目標設定をして、現状を把握し、最終的な目標に対するプロセス目標を設定します。

加えて、ポジティブな体験に目を向けて計画を実行し、ある程度の頻度でフィードバックを行う。といった一連の流れを長年かけて行えば、成長マインドセットは自然と身に着けることができます。

本記事を参考に成長マインドセットを身に着けて結果も精神的健康も良くしてみませんか?

引用参考文献

1)齊藤茂,永山貴,北村勝(2007).スポーツ選手の練習の「質」を分けるものは何か?:エキスパート・スポーツ選手の熟達化過程における練習の「質」の定性的分析 教育情報学研究6:45-53.

2)藤原裕弥(2006). 対処方略の採用傾向が課題成功失敗時の心理的ストレス反応に及ぼす影響 東亜大学総合人間・文化学部紀要6:59-69.

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バレーが嫌いだったけれど、バレーがなければ成長できなかった。だからこそスポーツを本気で変えたい。暴力暴言なしでも絶対強くなれる。「監督が怒ってはいけない大会」代表理事・益子直美)
ーーーーー
数えきれないほど叩かれました。
集合の際に呼ばれて、みんなの目の前で顔を。
血が出てたんですけれど、監督が殴るのは止まらなかった……
(ヒューマン・ライツ・ウォッチのアンケートから)

殴る、はたく、蹴る、物でたたく
過剰な食事の強要、水や食事の制限
罰としての行き過ぎたトレーニング
罰としての短髪、坊主頭
上級生からの暴力·暴言
性虐待
暴言

暴力は、一種の指導方法として日本のスポーツ界に深く根付いている。
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