「納得解」を得てもらいスポーツ環境をより良くする~有田祥太さん~

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NPO法人スポーツコーチング・イニシアチブでは、DOUSHI~これからのスポーツ教育の話をしよう~というコミュニティを運営しています。

このコミュニティとコーチング・ステーションのコラボ企画として、オープンインタビューという企画がスタートしました。この記事では、オープンインタビュー企画第二弾として、有田祥太さんをゲストにお迎えして、スポーツ環境をより良くすることへの想いについてお伺いしました。

コーチを志したきっかけとは?

有田

スポーツコーチングイニシアチブで一緒に活動しております、体育進学センターの有田祥太と申します。

オンラインでも授業をやっておりまして、未来の体育系大学に志望したい子、筑波大学や日本体育大学、順天堂大学とか、そういうところに行きたい子たちの受験のサポートとして、運動の指導をしたり、体育系の知識、スポーツ系の知識が必要な子たちに対しての授業を実施しています。

先ほど、翔一君の方から大学生キーパーのコーチということをご紹介させていただいたんですけれども、体育進学センターで働いていた時に、教え子の子がサッカーのプロ選手になりたいということで、卒業の時に僕に声をかけてきてくれて。

サッカーは一番得意ではないんですけど、僕自身も興味があったところはあるんで、それで指導してくれないかということを受けたので、オンライン上でコーチングしております。
今やっていることとしては、大枠でいうとそんな感じです。スポーツコーチングイニシアチブとしては、「届ける」とか「伝える」とか。それこそ体育進学センターで必要とされるようなところもあるんですけど、やっぱりそこは僕自身として磨いていきたい部分だし、ある程度、声もデカイし(笑)

 

河野

僕もずっとスポーツコーチング・イニシアチブに関わらせていただいているんですけど、有田さんのことで知らないことが結構あるといいますか。
サッカーコーチのきっかけも初めて聞きましたし。ちなみに、有田さんは競技としては、どんなことを選手でやっていらしたんですか?

 

有田

競技は、陸上競技の走高跳をやっていました。鹿屋体育大学という、鹿児島にある大学の方でもずっとやっていて、最高成績は2m11cm。大体、電話ボックスちょい下ぐらいだと思ってもらえたらいいんですけど、それぐらい、跳んでいました。

日本一になりたかったんですけど、その理由というのも当時、思い込みで「日本一になると、指導者として説得力が増すよね」というなんとなくなところがありましたね。それを目指していながらも、病気もあって辞めて指導者の道へ進みました。

 

河野

説得力というところでいうと、輝かしい戦績があるんじゃないですか?すごく謙虚な方だと思うので控えた感じにいったかなって思ったんですけど。インターハイ出場、熊本県1位とか。めちゃくちゃすごいですよね。大学時代も学生時代、学生の5位ですかね。

 

有田

学生個人出場で5位ですね。

 

河野

コーチになりたいとか、教える側にまわりたいとかって、いつ頃から思ってらしたんですか?

 

有田

そうですね、「人に伝える」ことを目指していたのは以前から漠然とありました。なんでかというと、多分おじいちゃんが校長先生だからだと思うんです。
いとこのおじさんも校長先生だし、そういう教育家庭だったというのももちろんあると思います。それもあって、高校に入った時ぐらいから「(コーチに)なりたいな」と思うようになりましたね。

その理由としては、「スポーツ指導ってこれでいいのかな?」ってやりながら思っていたことがあります。もともと教えるというのが好きだったというのもあると思うんですけど、それで「これは僕が教員になって変えよう」と思って指導者になろうと決めましたね。

 

河野

なるほど。逆に言うと「これでいいのかな?」という、スポーツ指導を自分が変えなきゃっていうところがきっかけなんですね。これは僕と一緒ですね。課題感を抱えて入ったという感じで。憧れて入るという部分と、課題感をもって「変えたい」と思って入るのって、また違うと思ってます。

そこで言うと、「何か変えたい」というところがキーワードになるんだなと思っていました。具体的に、言える範囲でいいので、どういった部分に「変えたいな」というか、課題感というのを感じたのかなというのを、ちょっと聞いてみたいなと思いました。

 

有田

僕が高校に入った時って、めちゃくちゃ強い高校だったんですよ。僕が入ったときには、熊本県で9連覇していて。9年連続の優勝。僕は、8連覇してた時から9、10、11で連覇したんですけど、結局14連覇ぐらいできたのかな。

僕の場合は、中学時代がそもそもそんなガチじゃないんで(裏で寝てるとかね 笑)あんまり運動好きじゃないし、みたいな感じだったんです。

たまたま走高跳をやったら、飛べちゃったんで、じゃあそのまま行こうかなっていうことで行ったんですけど、その時にやっぱり感じたのは、その環境に従うしかなかったというのがひとつはあります。

全員坊主だし、朝練も夜練もめちゃめちゃ長いし。怪我したら怒られるし、どやされるし、みたいな。もちろん世代にもよるんですけど、仲も良くなかったんですよ。「スポーツってこれ?」みたいな。先生達とかめちゃくちゃいい人たちなんですけど、なぜか部活動に対しては違うんですよ。それがなんか気持ち悪くて。まあその時は「非科学的だな」って思ったんですよ。

 

河野

ああー。言葉にするとってことですね。

 

有田

そう。スポーツ科学とか教えてもらってないし。「これ、絶対間違ってるだろ」みたいな。だから僕が、スポーツ科学を学んで、自分が教員になった時にそういう子たちにならないように変えるんだって思ってました。

 

河野

なるほど。非科学的な指導方法が課題感なんですね。これは、指導を受けた側で「間違ってるんじゃないかこれ?」って思ったことある人って、結構多いじゃないかなと思っています。

ただ、コーチに実際になってみると、言語化するのって結構難しいなっていうところがありますよね。まさにそれをやっていくのが「学び続ける」ということでもありますし、すごく共感できました。ちなみに「非科学的だな」っていうところで僕も今思い返したんですけど、それこそなんで、「非科学的だ」って思ったんでしょうね?

 

有田

いやもう、めちゃくちゃあるんですよ。まず「水飲むな」って。理由が昔だったら「水飲むな」っていうわけじゃなくて、先輩が優先なんですよね、どうしても。だから、飲む時間もないから、「トイレいきます」って言ってトイレ水道の水を飲むとか。

一番僕が印象に残っているのが、僕、39度8分くらいの熱が出たんですよ。で、雨の中300mを10本走るとか。辞めようと思ったら辞められたわけじゃん。でも「これをやらなければいけない」って思っていたんですよね。

1年生に入った段階で、「数か月したらもうお前がキャプテンになる」と指名をされていたのもあったので、やっていましたね。違うなということはなんとなく感じながら、やるっていうならやるしかないとは思っていました。もちろん自分自身が勝ちたいというのもあったし。

 

河野

なるほど。なかなか難しいですよね。疑っている自分がいるけど、でも疑っている自分もまだ信用できないというか。

 

有田

そうそう。強くなる方法がわからないから、すがるしかないみたいな。

 

河野

そうですよね。なかなかその道筋が見えていないからこそだし、やっぱり強い学校に進学すれば進学するほど、勝ってるっていう実績があるからこそ、正しいって何かなっていう。
ある意味では、思考停止かもしれないけど、子どもだし。高校生・中学生だと、そこを疑って勉強して、非科学的なことを証明することって難しいですよね。

 

有田

僕が悪いなと思っているのが、僕もそれを他者に強要していたことですね。「お前、なんで練習しないんだよ」みたいな。当時を思い返したら「馬鹿だなぁ俺」と思うんですけど。
ちょっと追加していうと、走高跳の練習が全然なかったんですよ。走高跳って、大学とかいくともう週3回とか4回とかあるんですけど、週に1回あるかないかだったんです。走って、体力トレーニングして飛び方全然知らないまま、フィジカルだけで飛んでたみたいな。

 

河野

すげー(笑)。それはどうなんですかね、非科学的なんですか?でも、一応勝ってはいるんですもんね?

 

有田

勝ってはいるんですよ。当時、身長183cmあって。58kgで入って、ガリガリだった。それがもう、68kgに筋肉だけで増えて、みたいな。

 

河野

なるほどー、基礎練習。僕の場合、武道なので基本的に道場の掃除からなんですね。やっぱり1年生は練習できなくて掃除を通して場を整えるというところから始まったりする。でもたしかに、必要だなって思いつつも、科学的なのかというと科学的じゃないような気もしていると言いますか。ちなみに、山口さんと後藤さんは何か聞きたいことはありますか?

 

山口

有田さんが実際に、その高校生の頃とかに。ネガティブだけじゃなくて、ポジティブに印象に残っていること。指導者から投げかけられた言葉とかあったら知りたいなあと思いました。

 

有田

当時、高校の時ってことですよね?うーん、何でしょうね。そういう言葉とかではないですけど、指導者に対してはなんとなく安心感はあったんですよね。だから恨んでるとかは本当になくて。どちらかというと、なんでこうなったんだろうって思いのほうが強いんですよね。

だから、そのなかで一番印象残っているのは、僕が高校3年生の時です。キャプテンだったんですがインターハイ前の合宿の朝練で、毎朝300mを3本走るんですよ。結構きついんです。僕、もともとそんなに足が速くないけどそれでもある程度、キャプテンになるからっていうことで、足を速くすることも頑張ったんです。でもその合宿の時に、全然走れなかったんですよ。

めちゃくちゃ走れなくて、もう号泣して「すみません」みたいな。すみませんっていうことかどうかもわからないんですけど、その時に、ある指導者の方が、なんか一緒にお風呂に入ってくれて。それで、「いや、もう大丈夫だ」って。「お前は一生懸命がんばってるし、そういう時も必ずあるから」ということを、すごい時間かけてお風呂のサウナで話したのを覚えています(笑)

おかげでその合宿は救われた感じがして、その印象は強いですね。だから、ピンチの時とか、自分が本当に落ち込んでいる時にそういう言葉をかけられるというのは、やっぱり素敵だなと思いますね。

 

山口

それはなんか、指導者と選手が同性ならではの良さですよね。私とかだと、指導者はだいたい男性なので。お風呂絶対、一緒にならないから。なんかそういう時間を共有できるのはいいなーって思いました。

 

勝利至上主義の文化に染まってしまうことに気づいた

 

河野

選手時代の経験のなかで指導者側になることを志したと思うんですけど、教員とか部活動で教えるということではなかったんですかね?

 

有田

最初はそれしかなかったですね。熊本県って、当時は走高跳の指導者は中学校にしかいなかったんですよ。走高跳とか短距離とか、そういうことをやられていた人はいっぱいいるんですけど、指導者が熊本県自体にいないみたいな。

だから「僕がなるんだ」って思ってたので、指導者の方向しか考えてなかったんですけど、母校のある熊本で教育実習に行った時にちょっとハッとした時があって「これは、指導者に僕がなっても、たぶんこれは変わらないな」と思ったんですよ。

指導者がめちゃくちゃ悪い人かというと、そうではないので、変わらないなって。「あ、これは指導者の指導者がもしかしたら悪いんじゃないか」とか、指導っていう方向にちょっと頭がシフトしたんですね。そこから、そうすると指導者の指導者にならないといけないなと考えるようになって、コーチ学をちゃんと学んで教えたい、という思考になったんです。 そこから大学の教員を目指すんですけど、博士課程に行くにときにちょうど親父が定年退職しちゃって。

定年になるということもあったので、1回働きに出た後に、そういういろんなことを学んでから、修士、博士課程行って大学の先生になろうと思って、1回就職をしようってことになりました。まあ、高校の臨時採用が決まっていたんですけど、たまたま、体育進学センターから後輩経由で紹介がありまして。そうすると、先ほど言ってくれたように、いろんな体育系を志望する子たちが集まるわけです。

その中に、指導者になりたい子たちはいっぱいいるし、教員になりたい子たちもいっぱいいるっていうのもあるし、やっぱり教育機関なので指導歴もつく。さまざまな利点がそっちの方が多そうだなと思って、体育進学センターに行ったようなかたちになりましたね。

 

河野

なるほどなー、現場ももちろん見たなかで、ここだけじゃ変わらないだろうなという感覚も得て。面白いですね。たしかに、現場が悪いっていうわけでもないですけど。やっぱり現場って戦場じゃないですけど、現場のなかで戦わないといけないじゃないですか。

科学的なスポーツに対して目を向けるっていう時間もないぐらい、指導者の方って忙しいとも思います。そういったなかではバックアップの存在というか。現場を見たなかで「こういう風にしていったほうがいいよ」とか、「こういう方がいいよね」って言ってくださる方ってすげー貴重だなって思いますね。

 

後藤

ちなみに、今の話でもう少し具体的なエピソードとかってありますか?

 

有田

その教育実習の話で言うと、教育実習めちゃくちゃ忙しいのに、そのなかで部活にも参加してほしいみたいなところもあったんで、それにもちゃんと参加していたんです。そこで、足が痛い子がいて、「いやもうこれ、走ったらたぶんダメだろうな」と思ったときがありました。

試合に出れなくなるし、将来的にもよくないだろうなと思って僕は先生に直接言いに行ったんですよ。自分が教わった先生だったこともあったので「先生、これたぶん走らせない方がいいと思います」って。でもそういう風に指導者がいっている中でも選手は「走らないと試合に出れない、出させてもらえない」と思ってるんですよ。そしたら、その指導者の方が「いやお前、走らないと出れないよ」みたいなことを言ったんですよ。

それを聞いて、僕は「え!?そんなこと言う人だったかな?」みたいになって。これはいわゆる勝利至上主義じゃないですけど、その文化にどんどん染まっていってるんだなって感じてしまったところが、一番印象的でしたね。

 

後藤

なるほど。その文化の中に入る選択肢をあえて取らなかったというところが、ありちゃんの方向性につながるんですね。

 

有田

そうですね。だから、そこに入ると僕も染まってしまう可能性があるなってなんとなく思っていたし。これ、俺が先生になってもこの文化を変えられる気はしないって思ったんですよねシンプルに。それもあって「日本一になりたい」って思うようになりました。日本一になったら、それなりに権力が多少なりともつくというか、そういうイメージもあったんでね。

 

スポーツ教育のあり方とは?

河野

過去の経験とかも踏まえて、有田さんが求めるスポーツ教育のあり方というか、「ここもうちょっとこう変わればいいのになあ」とか、そういったものがあればお聞かせ願えますか?

 

有田

今はNPO法人スポーツコーチングイニシアチブに参加している話をまだいってないんです。体育進学センターに就職した時に、大学院の博士過程を目指すためにがんばろうとするんですけど、「なんとなく違うな」って思うようになりました。

その一番のきっかけは、大学院の先生に電話した時に「お前、何がしたいんだ」っていわれたことなんですよ。「僕はスポーツの文化的なところを変えていきたいんです」みたいな話をすると、「お前じゃあ、うちの大学院じゃないぞ」って言われたんですよね。コーチ学じゃなく、マネジメントだと。

哲学とかって言われて、「あ!」ってなって。たしかに、コーチ学を教えることが目的じゃなくて、俺は文化を変えることが目的なんだと、そこでハッとなったんですよね。だからあの時の先生に感謝してます。「ああ、そうだな」って思ってからは「じゃあ、文化を変えるためにどうしたらいいんだ?」って思ったとき「まずは、伝えていかないと、発信していかないといけないな」ってなったんですよ。

とりあえず、なんとなしにブログ書いたりTwitterやってみたり、なんやかんやしてたんですけど、「いやこれ変わんねー!」ってなって。もちろん、大切な一部ではもちろんあるんですけど、体育系大学の予備校にいて、みんなから知られづらいようなところにいるやつのブログなんて、まあ読まない。だから、とりあえず練り歩こうと思ったんですよね。直接、1個ずつ伝えていった方がいいだろうということで、セミナーに参加しだした時にスポーツコーチング・イニシアチブに出会いました。

そしたら、「おお、俺のやりたいことやってるやんけここ!」みたいになって。それまで、自分と同じように「文化を変えたい」みたいな人に出会ったことがなかったんで「うわあー!同じ人いたー!」ってなりました。代表の小林くんがやっていたんで、「ちょっといいですか」って話しかけて。「これ、やりたいと思ったんですよ」って言った瞬間に、「え!?」ってなって。で、一緒に、握手してみたいな感じで、「文化を変える」という方向にいったんですね。

じゃあ、どういう文化になって欲しいかっていうとね。僕はみんな幸せになってほしいんですよ。競技力を高めることが僕にとっては幸せだったし、それはそれで別にいい。勝利を目指したいならそれで全然いいと思うけど、そうじゃない人たちもいる。勝利を目指す過程によって、僕みたいに傷つく人もいるんですよ、どうしても。

その度に「スポーツってそうじゃないだろ」という思いもあって、なんとなくスポーツが汚されているような気になってしまって。僕はシンプルに、スポーツをやったり、スポーツに関わっている全ての人に幸せになってほしいというか、「不幸になってほしくない」んです。「プラスをもっとプラスに」というよりは、「マイナスになってほしくない」っていうか。だから、ケガとかもあんまり好きじゃないし。そんなイメージが近いですね。

 

河野

なるほど。やっぱり、スポーツを経験することで何かのトラウマを抱えるとか、そういうことですよね。必ずしもめちゃくちゃプラスになるっていうことは、置いておいたとしても、スポーツをやっていたことによって人生が狂ったみたいなことはなくしていきたいというところで。

たしかに、スポーツの文化づくりというのはすげぇ大事だなっていうのは感じていて。スポーツのあり方ってなかなか、勝利至上主義っていうところもあったと思うんですけど、人間としての成長って何なのかなっていう。

 

スポーツを通して成長につながる瞬間とは?

河野

有田さんが今、学生とかにも関わっているなかで、成長する瞬間というか。スポーツじゃなくてもいいと思うんですけど、スポーツも通して人間的な成長をしたいって考えるなかで、どういうことをすると成長につながっているなっていう感覚になりますか?

 

有田

まずそもそも、幸せには成長というのは絶対必要だと思っていて。SCIのビジョンにもあるように、子どもの可能性をもっともっと引き上げるのもあると思うんです。成長の話で、実感でいうと、一番は僕が必要じゃなくなった時ですかね。

放っておいても、「おお、めっちゃ考えて勉強してるじゃん」とか、自分で考えて運動して、友達と話しながらいろいろ考えるようになってる姿を見た時とかを俯瞰でパッと見た時とかそう思います。僕ってちょっと、相手に入り込みすぎちゃうんですよ。だから相手の人生に僕が入り込んでしまいやすくなるので、それを一歩引いて俯瞰で見た時に、相手が自分でやっている姿を見ると「おおー、成長してるなー」と感じますね。

 

河野

なるほど。やっぱり人によっても成長の感じ方とかは違うと思うので。今、すごく、有田さん独自というか。

 

参加者

「スポーツしている人がみんな幸せになってほしいというのは共感です」

 

有田

うれしい。

 

河野

優しいコメントですね。

 

山口

どんな方が見てくれてるのかも気になりますよね。

 

奪われない環境、自走できる環境を目指したい

河野

後藤さんと山口さん、どうですかね。今のところお話を受けていて、ちょっと過去から遡っていって、スポーツのあり方というか。今どういうことを意識していますかというところで話をしてるんですけども。何か聞いてみたいこととか、逆に「ここ今ちょっと話してみたいな」というところがあれば、どうぞ!

 

後藤

今、スポーツコーチングイニシアチブの活動のなかで、スポーツのあり方みたいなところをみなさんとともに考えていると思うんですけど、そのなかで、有田君が一番、「ああ、これすごい」「すごいこれ、いい意見だな」と思った意見とかってありますか?人の意見を聞いた時に「これすごい!自分のなかではこういうあり方がいいんじゃないかな?」みたいひらめきを得た時があるかなと思って。

 

有田

そうですね。「あり方」って言ったらいいのかわかんないですけど、限定的な考えはあんまりもっていなくて。どんなあり方でもいいんですけど、アクションとしては例えば「競技力を目指す」とか「楽しくやる」とかっていうのはそれぞれに多様性があっていいと思うんです。

でもなんでしょうね。奪わないでほしいんですよね。楽しさとかもそうだし、自分がやりたいこともそうだし、スポーツする環境とか、成長や可能性が奪われてしまったりして欲しくない。それが子どもたちでも大人たちでも、スポーツする中でそれぞれが思っている「こういう風にやりたいなー」とか「こういう風になれるといいなぁ」みたいなものを、奪わないでほしいなと思います。そういう社会になってほしくないなっていうイメージですね。

 

参加者

「自分のコーチングした先に、自分から離れて自走していてくれたらうれしいですね」

 

有田

そうなんですよ。サッカーのパーソナルのコーチしてるんですけど。それで最初に約束したのが「(僕を)必要としないようになろうね」という話を2人でして、始まったのを今思い出しましたね。やっぱり、最終的にコーチが必要なくなるっていうところをコーチは目指さないといけないと思っています。

 

河野

まさにそうですよね。「自走」っていうのはすげー大事で、そもそも教育の目的にはひとつ「自立」というのがあるなと思っています。やっぱり、指導者の言うことを聞くってもちろんすごく大事な気もするんですけど、いき過ぎると宗教っていうか「この人がいないと生きられない」みたいになっちゃうんですよね。

それって「良い指導者」とも言えるけど、でも本当に良い指導者なのかっていうのは疑問というか、難しいところかなと。スポーツのあり方に加えて、求めるべき、目指すべき指導者の像って何なのかなというのは、僕自身が今、大切にしている哲学的な問いなんですよね。

 

有田

僕の場合は「今も未来もキラキラ輝かせるコーチである」という風に考えています。やっぱり予備校で仕事しているっていうこともあって1年間単位で全部ぐるぐる回るんですよ、受験ですから。
でも「今」を幸せにしてあげないといけないのは間違いない中で、「今」を「未来」のためだけに費やすというのはたぶん違うと思うんです。逆に「未来」を疎かにして「今」だけ受験をがんばればいいというのも違うと思っていて。

それを体育進学センターで実感できたのも、めちゃくちゃよかったなと思っています。3年単位とかだとそれがちょっとぼやけるような気もするし、1年単位だからこそ気づけたところもあると思うんで。「今」も「未来」もちゃんと輝かせてあげたいなということを、コーチングの自分のビジョンとして置いていますね。

 

大切なのは「絶対解」ではなく「納得解」

 

河野

なるほど、確かにすごい大事ですね。最初の原体験のところで、非科学的な指導方法といいますか、納得できない練習をしている瞬間って、これってひとつは、不幸せじゃないですか。そうじゃなくて、科学的というか、選手側が「これをやる意味って何だろう」というのを落とし込んだうえで自信を持って練習するのと、我慢して練習するのってやっぱり違うなぁと思うんです。

そういう意味で、やっぱりコーチ学というか、科学的なスポーツの指導って何故大事なんだろうというのを考えた時に、まさに今、俺はすごく科学的な視点で一生懸命スポーツのことも調べて、それを部活のなかで実践して試して、PDCA回しているんだという実感を得られると、必ずしも勝てなくても、工夫した点というのがやっぱり将来に活きると思っているので原体験のところに戻ってきたなっていう感じがしますね。

 

有田

そうですね。今の話で言うと、青山学院大学のワークショップデザイナーにも、今通わせていただいているんですけど。そこでいっていたのが、「正解ではなくて納得解が大事である」みたいな話。

たしかにスポーツって、ほぼ正解がないじゃないですか。いくら科学を勉強しても、結局は科学に当てはまらない人も絶対いるんですよ。そうなった時に、やっぱりコーチも選手も、一緒にその納得解を作り上げていくことがすごく大切だし、選手が持っている納得解をしっかり読み取ってやっていくというのが、すごく大切だなと思います。

2つの軸を持って行動し続けること

河野

時間もほとんど後半になってきましたので、これからどんな活動していきたいかとか、スポーツのあり方をこういう風に変えていきたいといったお話を最後にお願いします。

 

有田

はい、そうですね。これからでいうと、僕は2つの軸で基本的に動いていて。さっきいった「コーチとしての今も未来も輝かせることができるコーチになる」というのがまず1つ目の軸として、絶対にあるものです。その勉強と実践というのは、今後も繰り返していきたいと思っています。

そして、やっぱりスポーツする側の関係をよりよくしていくというのが、もう1つの軸としてあるんですね。自分に対してと、社会に対して。これが交差することは、もちろんあると思うんですけど。その2つで、基本的に生きているなと感じています。なので、文化の変え方というのも詳しく知っているわけではないけれど、スポーツ指導をより良くしていくためにも、デリバリーの仕方とか指導者に対して何かを届けるとかを通して、指導者に気づいてもらう中で、それこそ納得解を得てもらうこととか。

納得解を得てもらうことは、僕自身が理解しているわけではないので、青山学院のワークショップデザイナーに通わせてもらってそれを届けていきながら、今後はその両方を含めて、キャリアコンサル的な資格を取っていきたいなというのも、なんとなくあるんですね。

未来の作り方というのか、スポーツ以外の未来の作り方っていうのをちゃんと理解しておかないと、スポーツをそこから生かせないなというのをなんとなく感じているのでそういったこともやっていきたいなと思っています。それって体育進学センターとしてもそうなんですよね。受験って結構変わってきていて、今はもう「英国数」だけじゃないから、自分で考えて自分で作り上げていかないといけない場面っていうのは、増えてきています。

だから、自分自身についても理解してもらわないといけないと思ってるんです。コーチングもしないといけないし、ワークショップみたいなもので新しく作り上げてもらいたいということも、もちろん思っていて、キャリアコンサル的に「未来もちゃんと自分のこと考えようね」じゃないけど、「大学がゴール」じゃなくて、大学という環境をしっかりと生かしてほしいし、未来をキラキラ輝かせてほしいと思っています。なので、大きく変えられるというよりは、地道に指導者の人たちと一緒に手を取り合ってやっていきたいなと思っています。

 

河野

そうですよね。まさにコミュニティの力とか、志を同じくする者の力が必要だと思いますので。ぜひ、関われる方は関わっていきながら、これからのスポーツについていろいろと考えて、行動に移せればいいなと思っております。

 

ダブル・ゴール・コーチングに出会って変わったこと

 

山口

有田さんが、ダブル・ゴール・コーチングというものに共感して、今スポーツコーチング・イニシアチブに関わっていただいていると思うんですけど、有田さんがダブル・ゴール・コーチングに出会う前と出会った後で、何か変わったことがあればお聞きしたいです。

 

有田

前提として、僕はスポーツ指導を変えたいという思いがあります。スポーツ指導というか、スポーツの環境を変えたいという思いが強いんですよね。もちろんダブル・ゴール・コーチがすべて正解ではないという前提でしゃべらせていただきまけど、一番、自分の指導で変わった点としては、ほめ方ですね。

ほめる時に、以前は特徴をほめていたんですよ。その人自身のパーソナリティっていうか、言い方は悪いけど「足が長いね」とか。こういう素材があるから、これをこう生かすといいよって。もちろんそれは、ひとつの正解だと思うんですけど。結局はそれにすがってしまうんです。そうなると、特徴がない場合や、なんらかの理由で特徴を生かせなくなったり失ってしまったりしたら、「それ以外はダメだ」って思う可能性ももちろんあるんじゃないかなって。

良かれと思ってほめていたところが、実は自分自身を固定させてしまうマインドというか「才能である」ってならせてしまっていたので。そうするとやっぱり、成長マインドセットだとか固定マインドセットだとかでいうと、長期的に見た時に成長しなくなる人を育ててしまったのかなという悔いはあります。なので、それを知ってからは、アクションや行動、努力、学習、を意識的にみるようにはしていますね。

推薦とかもらえるくらい、すごくダンスがうまい子がいるんですけど、その子にその話をした時に、すごい共感してくれて。その子、めちゃくちゃ上手なんですけど、「あなただからできるんですよ」みたいなことをみんなで踊っている時にいわれたらしいんですよ。

そしたら、自分が認められていないように感じたらしくて、それって自分の努力とか持っているものとかやってきたことを認められたって思えないじゃないですか。なので、そう考えた時に、僕は大変失礼なことをしていたなと感じたんです。やっぱり自分自身ががんばってきたものやがんばっていきたいことというのは非常に大切だなと思ったところから、自分の指導が変わったかなという実感はあります。

 

山口

すごいですね、それを客観的にじゃなくて、内省できているというのはすごいなって個人的に思ったんですけど。それに気づけず、自分のやっていることが正しいのかなーって悩んでいる指導者さんってすごく多いんじゃないかなと思っています。有田さんが内省できたきっかけなのか、やり方なのかわかんないんですけど。自分が意識的なのもあるのかなって。

 

有田

えぇー。今も、無意識でかけている言葉あると思うんですけど、特徴の話で言うと、意識的にかけていたところもあるので、変えられたと思うんです。僕って結構生徒と仲良くなるんですよね、こういう性格なので(笑)

だから僕、「俺の悪いところ何?」「俺の指導者として悪いとこ教えて、傷ついたこと教えて」って聞いちゃうんですよ。自分を良くしたいし、言ってくれる子たちだと思っているから。その答えを聞いて「たしかに俺、言うわ~」みたいな感じになって、それを直していってるなっていう感じはしてます。

 

河野

ありがとうございます。なんか本当に、自己紹介というようなところだけじゃなくて、インタビューのなかでいろいろと考えながら結構話していて。すごく思考するような1時間だったなと思っております。で、今日のベストコメントは「納得解」ですね(笑)

本当に「納得解」大事だなと思いました。というところで質問もおさまりましたので、本日のイベントは終了させていただきたいと思います。今日の登壇者、有田さんでした。ありがとうございました。

「支導者」として中学空手の全国大会を制覇した時の経験談~河野翔一氏~

ダブル・ゴール・リーグへの想い~渋川工業高校野球部小泉健太氏~

子どものやる気を育み大人の想像を超える人を育む~青野祥人さん~

スポーツに潜む子どもたちの将来における可能性~宇田川和彦コーチ~

インタビュワープロフィール

有田 祥太(アリタ ショウタ)
1991年1月8日生まれ(30歳)
熊本県天草&三角育ち

競技歴

  • ハンドボール 3か月
  • 陸上競技全般 1年半
  • ソフトボール 6か月

中学生時代(陸上部)

  • 長距離(さぼり部)
  • 走高跳(3か月、ジュニアオリンピック出場)
  • 高校時代(熊本工業 陸上部)
  • 走高跳(熊本県1位、インターハイ出場)
  • 八種競技(熊本県1位)
  • 三段跳(熊本県2位)

大学時代(鹿屋体育大学 陸上部)

    • 走高跳(2012日本学生個人選手権大会5位)

大学院時代(鹿屋体育大学 陸上部)

脳の障害を患い視覚がおかしくなったため引退を決意、指導者の道へ。

指導歴

  • 2013年4月~2015年3月
    鹿屋体育大学陸上競技部プレイングマネージャー
  • 2014年4月~2015年3月
    NIFSスポーツクラブ 中学生・シニアの部 短距離コーチ
  • 2015年4月~現在
    体育進学センター 指導部
  • 2018年4月~現在
    大学生キーパーパーソナルコーチ(オンライン)

体験エピソード①
ゲームしか思い出のない小学校・中学校時代に偶然跳べた走高跳に出会い、勝てることが楽しくて、熊本県で総合9連覇していた熊本工業へ進学。非科学的な指導方法、理不尽なスポーツ現場に憤りを感じ、自らが教員となりその現状を変えるんだ!と教員を目指し鹿屋体育大学へ進学。指導を変えるためには自分には実績が必要だと考え大学院まで進学し、日本一を目指すが断念。

体験エピソード②
大学院時代にコーチング学を学ぶにつれ、このスポーツ環境は自分が高校教員になるだけでは変わらないと気づく。そこから指導者の指導者になろうと博士課程を経ての大学の先生を志すが、金銭面の関係から一度働くことを決意。そして縁もあって、指導歴もつき大学の繋がりも多く作れそうな、体育進学センターに就職。しかし、これも同様に自らが大学の先生になってもスポーツ環境は変える事が出来ないと考えつく。

体験エピソード③
そして自ら発信していこう、変える方法を見つけていこうとセミナーを練り歩いていた時に『スポーツコーチング・イニシアチブ(SCI)』に出会う。これは。。。俺がやりたいことをやってるぞ!?!?!?と感じ、
セミナー終了後代表の小林君にすぐさま声かけたところ『一緒にやりましょう!!』とその場で快く受け入れていただき、SCIに加入。

現在の想いと活動内容
SCIでは指導者が自らの指導現場をよりよくしてもらえる、共に考えられるような指導者向けワークショップを中心に活動中。

スポーツコーチング・イニシアチブホームページ

スポーツコーチ同士の学びの場『ダブル・ゴール・コーチングセッション』

NPO法人スポーツコーチング・イニシアチブではこれまで、長年スポーツコーチの学びの場を提供してきました。この中で、スポーツコーチ同士の対話が持つパワーを目の当たりにし、お互いに学び合うことの素晴らしさを経験しています。

答えの無いスポーツコーチの葛藤について、さまざまな対話を重ねながら現場に持ち帰るヒントを得られる場にしたいと考えています。

主なテーマとしては、子ども・選手の『勝利』と『人間的成長』の両立を目指したダブル・ゴール・コーチングをベースとしながら、さまざまな競技の指導者が集まり対話をしたいと考えています。

開催頻度は毎週開催しておりますので、ご興味がある方は下記ボタンから詳しい内容をチェックしてみてください。

ダブル・ゴール・コーチングに関する書籍

NPO法人スポーツコーチング・イニシアチブでは、子ども・選手の『勝利と人間的成長の両立』を目指したダブル・ゴールの実現に向けて日々活動しています。

このダブル・ゴールという考え方は、米NPO法人Positive Coaching Allianceが提唱しており、アメリカのユーススポーツのスタンダードそのものを変革したとされています。

このダブル・ゴールコーチングの書籍は、日本語で出版されている2冊の本があります。

エッセンシャル版書籍『ダブル・ゴール・コーチングの持つパワー』

序文 フィル・ジャクソン

第1章:コーチとして次の世代に引き継ぐもの

第2章:ダブル・ゴール・コーチ®

第3章:熟達達成のためのELMツリーを用いたコーチング

第4章:熟達達成のためのELMツリー実践ツールキット

第5章:スポーツ選手の感情タンク

第6章:感情タンク実践ツールキット

第7章:スポーツマンシップの先にあるもの:試合への敬意

第8章:試合への敬意の実践ツールキット

第9章:ダブル・ゴール・コーチのためのケーススタディ(10選)

第10章:コーチとして次の世代に引き継ぐものを再考する

本格版書籍『ダブル・ゴール・コーチ(東洋館出版社)』

元ラグビー日本代表主将、廣瀬俊朗氏絶賛! 。勝つことを目指しつつ、スポーツを通じて人生の教訓や健やかな人格形成のために必要なことを教えるために、何をどうすればよいのかを解説する。全米で絶賛されたユーススポーツコーチングの教科書、待望の邦訳!

子どもの頃に始めたスポーツ。大好きだったその競技を、親やコーチの厳しい指導に嫌気がさして辞めてしまう子がいる。あまりにも勝利を優先させるコーチの指導は、ときとして子どもにその競技そのものを嫌いにさせてしまうことがある。それはあまりにも悲しい出来事だ。

一方で、コーチの指導法一つで、スポーツだけでなく人生においても大きな糧になる素晴らしい体験もできる。本書はスポーツのみならず、人生の勝者を育てるためにはどうすればいいのかを詳述した本である。

ユーススポーツにおける課題に関する書籍『スポーツの世界から暴力をなくす30の方法』

バレーが嫌いだったけれど、バレーがなければ成長できなかった。だからこそスポーツを本気で変えたい。暴力暴言なしでも絶対強くなれる。「監督が怒ってはいけない大会」代表理事・益子直美)
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数えきれないほど叩かれました。
集合の際に呼ばれて、みんなの目の前で顔を。
血が出てたんですけれど、監督が殴るのは止まらなかった……
(ヒューマン・ライツ・ウォッチのアンケートから)

・殴る、はたく、蹴る、物でたたく
・過剰な食事の強要、水や食事の制限
・罰としての行き過ぎたトレーニング
・罰としての短髪、坊主頭
・上級生からの暴力·暴言
・性虐待
・暴言

暴力は、一種の指導方法として日本のスポーツ界に深く根付いている。
日本の悪しき危険な慣習をなくし、子どもの権利・安全・健康をまもる社会のしくみ・方法を、子どものスポーツ指導に関わる第一線の執筆陣が提案します。

 

NPO法人スポーツコーチング・イニシアチブについて

スポーツコーチング・イニシアチブ

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