結果がすべてだからこそ過程が大切!選手の努力を促し最高のパフォーマンスを引き出そう

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よく結果が全て、プロセスや努力を評価するのは甘えという言葉を耳にするのではないでしょうか。しかし結果には、偶然生まれる場合もあれば必然的に生まれる場合もあります。

本記事では、結果を必然的に生み出すために過程の評価がいかに重要であるのかをレジェンドと呼ばれるスポーツコーチを例にあげながら解説します。

結果がすべてだからこそ過程を重視するのが大切

結果がすべてだからこそプロセス(過程)を重視することは大切です。なぜならば、多くの研究結果の中で過程を重要視した評価を得た人のほうが結果だけを重要視して評価を得た人よりもパフォーマンスが高かったと科学的に立証されているためです。

努力や過程を評価することで結果が出る可能性が高くなる

努力やプロセス(過程)を重視することで結果が出るというのは、過去の先行研究によって証明されています。

ただし、あくまで結果があってこそのプロセス(過程)であることは念頭に置きます。心理学の理論でいえば、達成目標理論があります。達成目標理論では、目標の種類とその意味づけがモチベーションにつながるという立場をとります。

この達成目標理論では、課題目標成績目標の2つがあり、課題目標を立てる人は、努力や練習を重視して動機付け(モチベーション)に良い影響を与えると報告されています※1。

この動機付け(モチベーション)は、アスリートの心理的競技能力の中の競技意欲と関係していることが報告されており競技意欲は心理的競技能力の一つとして位置づけられています※2。

この心理的競技能力が高いほどスポーツにおけるパフォーマンスが高いことも報告※3されています。つまり、努力などのプロセス(過程)を重視することで動機づけ(モチベーション)が高まり、結果(勝敗や得点など)に影響することがいえます。

コーチが過程を重視することでアスリートのパフォーマンスが発揮される

コーチがアスリートの過程を重視することでパフォーマンスが高かったということは、既に過去の研究の中で行われています。

Lyle※4の報告によれば、トップアスリートにかかわるコーチの特徴として、より高い目標への期待、コーチと選手の関係における安定性、中・長期へのプランニング、観察力、状況判断力、ファシリテーション能力があることを報告しています。

このトップアスリートに関わるコーチの中でも全国大会レベルや国際大会レベルなどの高いレベルの大会において成績を収めているスポーツコーチは、単純な勝ち負けではなくKPI(Key Performance Indicator)を定めていることも報告されています。

結果を出すための指導で大切なポイントは成長

結果を出すためのポイントとして、大切なのは成長です。なぜならば、短期的な結果だけではなく、長期的な結果を出すためには、成長が基盤となるためです。

成長に必要なマインドセットを育むことはとても大切

成長にはマインドセットがとても大切です。特に、成長マインドセットという考え方を育むことは、チャレンジ精神を養ったり、批判から学ぼうとする姿勢を身につけたり、努力を促進するので、とても大切です。この成長マインドセットの対義語として固定マインドセットがあります。成長マインドセットと固定マインドセットについては、伴氏がスポーツコーチング・ラボの中で述べています。

勝利至上主義からの脱却のために!アスリートセンタードコーチングの考え方~コーチング・ラボレポート~

成長マインドセットとは、挑戦を受け入れようとする気持ち障害にぶつかってもあきらめない心努力を達成への道へと感じること批判から学ぼうとすること他人の成功から学び意欲へしようとする「姿勢」のことで、これらの姿勢を養うことによって高い目標を達成することができるでしょう。

下記は成長マインドセットに関する記事ですので参考にしてみてください。

成功体験を積むとどうなる?基本的な考え方を心理学的知見に基づいて解説!

勝利と成長の両立を目指すとはどういう事なのか?〜マインドセットの観点から〜

また成長マインドセットを養うコーチングの方法としては、アスリートセンタードコーチングという方法があります。

日本中で散見されるコーチセンタードコーチングとは異なったコーチング方法で、日本体育大学の伊藤教授の記事もありますので合わせて参考にしてみてください。

新時代に求められる「アスリートセンタード・コーチング」(日本体育大学教授 伊藤雅充氏)

このように、選手の成長を育むためには成長マインドセットを養うことが重要で、そのためのコーチング方法としてはアスリートセンタードコーチングという考え方があります。

レジェンドコーチはスポーツを通して人間的成長を促している

レジェンドコーチはスポーツを通して人間的成長を促しています。

アメリカのレジェンドコーチといえば、アメリカ大学バスケットボール界の名門カルフォルニア大学ロサンジェルス校の監督で、20世紀最高のスポーツ指導者と呼ばれるジョン・ウッデン氏です。

このジョン・ウッデン氏が長いキャリアの中で築き上げた中で大切にしていたコーチング哲学として、成功のピラミッドが存在します。

成功のピラミッドの基礎は人間的成長

成功のピラミッドの基礎は、人間的成長に関わる要因で構成されています。成功のピラミッドは、ピラミッドのように基盤となる段から頂点となる段までがあります。

下記には基礎となる段から頂点の段までを紹介します。

基礎となる人間的成長の要因

成功のために基礎となる人間的成長として下記の5つの要因が挙げられます。

  • モチベーション(Acting in the best interest of each athlete)
  • 社交性(Building strong relationship)
  • 忠誠心(Never avoiding one’s duty to others)
  • 協調性(Contributing to a learning community)
  • 熱意(Practicing moderation and perspective in all things)

これらはほぼすべて人間的成長の要因として捉える事ができるのではないでしょうか。

つまり、何をする上でも成功を望むのであれば基盤は人間的成長が必要不可欠であるということです。

第二の基盤となる学びの場から学ぶための要因

第二の基盤となる要因として、学びの場から得ることが挙げられます。コーチは必ずしもすべてのことに精通しているわけではありません。そのため、多くのコーチには学びの場があります。

その学びの場には、同じコーチもいればメンターや学生コーチ、またはコーチ以外の人が多く訪れますが、そうした人たちから学ぶために下記のような要因が必要であることが成功のピラミッドでは説かれています。

  • 自制心(Hard work based on careful planning)
  • 探求心(Deep desire to know why, not just how)
  • 自己解決力(Seeking continuous improvement)
  • 批判や困難から学ぶ姿勢(Finding and investing ways to get around obstacles)

このように、第二の基盤となる段階においても、人としてどうあるべきかという部分が述べられています。

人としてどうあるべきかを選手に探求してもらうために、ダブル・ゴール・コーチングという方法があります。

ダブル・ゴール・コーチングとは、スポーツでも人生でも勝者となるためのアメリカのコーチングメソッドで、心理学領域の研究が組み込まれた科学的なコーチングメソッドです。


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知識と相手に対する理解・調整力

3段階目としてようやくコーチとしての知識と相手に対する理解、常にベストを尽くすための調整力があります。

  • 実践的な知識(Knowing how to teach so athletes learn)
  • 相手に対する理解(Knowing a subject to its roots)
  • 調整力(Moral, mental, emotional, physical; to be at your best all the time)

これらはピラミッドの心臓部分であり、この要因によってコーチングの影響は大きく異なります5)

自立と価値観の形成そして最高のコーチ

4段階目には

  • 自立(Standing up for what is right, true, and best)
  • 価値観の形成(Grounded in the value of the pyramid)

があります。

最後に

  • 最高のコーチ(You haven’t taught until they have learned)

があります。

4段階目は達成することが最も困難であり、コーチとして成功するためには必ず必要なことでもあります。

この4段階目の要因を満たし、選手のためにすべてを尽くしたコーチこそが最高のコーチである5)と成功のピラミッドの中では定義されています。

この最高のコーチは、最高のアスリート・最高の教師・最高な上司・最高の親として置き換えることができ、実際にジョン・ウッデン氏は選手を指導する際には最高のアスリートとして成功のピラミッドを築くコーチングをしていました。

まとめ

結果を出すためには結果に目を向けることが重要です。なぜならば、過程に目を向けた方が、結果に目を向けるよりもパフォーマンスとして高いことが過去の研究結果の中で報告されていて、心理学における理論として成り立っていることであるためです。

この過程では、主に人間的成長において重要視するべきであり、アメリカのレジェンドコーチジョン・ウッデン氏が実際に行ったことでもあります。

20世紀最高の指導者といわれたジョン・ウッデン氏が大切にしていたコーチング哲学として、成功のピラミッドがあります。この成功のピラミッドでは、土台に人間的成長に関する要因が多く組み込まれており、人間的成長が重要であることをレジェンドコーチは物語っています。

本記事を参考に、選手や生徒・子供の行動における評価について考え直してみてはいかがでしょうか。

参考引用文献

1) 西田保(2013).スポーツモチベーション 動機付け理論 大修館書店pp.24-pp.38.

2)徳永幹雄(2001).スポーツ選手に対する心理的競技能力の評価尺度の開発とシステム化 体育学研究46:1-17.

3)徳永幹雄・吉田英治・重枝武司・東健二・稲富勉・斉藤孝(2000).スポーツ選手の心理的競技能力にみられる性差, 競技レベル差, 種目差, 健康科学22:109-120.

4) Lyle, J(2002).Sport coaching concepts: A framework for coaches’ behavior. London: Routledge.

5) Jeffery J, Huber (2013). Applying Educational Psychology in coaching athlete Athletes and Theories of Humanism, Human Kinetics: pp. 282-pp. 285.

スポーツコーチ同士の学びの場『ダブル・ゴール・コーチングセッション』

NPO法人スポーツコーチング・イニシアチブではこれまで、長年スポーツコーチの学びの場を提供してきました。この中で、スポーツコーチ同士の対話が持つパワーを目の当たりにし、お互いに学び合うことの素晴らしさを経験しています。

答えの無いスポーツコーチの葛藤について、さまざまな対話を重ねながら現場に持ち帰るヒントを得られる場にしたいと考えています。

主なテーマとしては、子ども・選手の『勝利』と『人間的成長』の両立を目指したダブル・ゴール・コーチングをベースとしながら、さまざまな競技の指導者が集まり対話をしたいと考えています。

開催頻度は毎週開催しておりますので、ご興味がある方は下記ボタンから詳しい内容をチェックしてみてください。

ダブル・ゴール・コーチングに関する書籍

NPO法人スポーツコーチング・イニシアチブでは、子ども・選手の『勝利と人間的成長の両立』を目指したダブル・ゴールの実現に向けて日々活動しています。

このダブル・ゴールという考え方は、米NPO法人Positive Coaching Allianceが提唱しており、アメリカのユーススポーツのスタンダードそのものを変革したとされています。

このダブル・ゴールコーチングの書籍は、日本語で出版されている2冊の本があります。

エッセンシャル版書籍『ダブル・ゴール・コーチングの持つパワー』

序文 フィル・ジャクソン

第1章:コーチとして次の世代に引き継ぐもの

第2章:ダブル・ゴール・コーチ®

第3章:熟達達成のためのELMツリーを用いたコーチング

第4章:熟達達成のためのELMツリー実践ツールキット

第5章:スポーツ選手の感情タンク

第6章:感情タンク実践ツールキット

第7章:スポーツマンシップの先にあるもの:試合への敬意

第8章:試合への敬意の実践ツールキット

第9章:ダブル・ゴール・コーチのためのケーススタディ(10選)

第10章:コーチとして次の世代に引き継ぐものを再考する

本格版書籍『ダブル・ゴール・コーチ(東洋館出版社)』

元ラグビー日本代表主将、廣瀬俊朗氏絶賛! 。勝つことを目指しつつ、スポーツを通じて人生の教訓や健やかな人格形成のために必要なことを教えるために、何をどうすればよいのかを解説する。全米で絶賛されたユーススポーツコーチングの教科書、待望の邦訳!

子どもの頃に始めたスポーツ。大好きだったその競技を、親やコーチの厳しい指導に嫌気がさして辞めてしまう子がいる。あまりにも勝利を優先させるコーチの指導は、ときとして子どもにその競技そのものを嫌いにさせてしまうことがある。それはあまりにも悲しい出来事だ。

一方で、コーチの指導法一つで、スポーツだけでなく人生においても大きな糧になる素晴らしい体験もできる。本書はスポーツのみならず、人生の勝者を育てるためにはどうすればいいのかを詳述した本である。

ユーススポーツにおける課題に関する書籍『スポーツの世界から暴力をなくす30の方法』

バレーが嫌いだったけれど、バレーがなければ成長できなかった。だからこそスポーツを本気で変えたい。暴力暴言なしでも絶対強くなれる。「監督が怒ってはいけない大会」代表理事・益子直美)
ーーーーー
数えきれないほど叩かれました。
集合の際に呼ばれて、みんなの目の前で顔を。
血が出てたんですけれど、監督が殴るのは止まらなかった……
(ヒューマン・ライツ・ウォッチのアンケートから)

・殴る、はたく、蹴る、物でたたく
・過剰な食事の強要、水や食事の制限
・罰としての行き過ぎたトレーニング
・罰としての短髪、坊主頭
・上級生からの暴力·暴言
・性虐待
・暴言

暴力は、一種の指導方法として日本のスポーツ界に深く根付いている。
日本の悪しき危険な慣習をなくし、子どもの権利・安全・健康をまもる社会のしくみ・方法を、子どものスポーツ指導に関わる第一線の執筆陣が提案します。

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スポーツコーチング・イニシアチブ

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ABOUTこの記事をかいた人

東海大学体育学部競技スポーツ学科卒(2015) 東海大学大学院体育学研究科修了(2017) 専門はスポーツ心理学で主にメンタルトレーニングの研究と実践に携わる 経歴は、大学生弓道部(5年)中学生野球部(2年) 大学生弓道部は全国ベスト8位3回 16位1回を経験 大学院修了後はフリーランスとしてウェブライター兼メンタルトレーニングアドバイザーとして活動