3月3日に開催されたスポーツコーチングJapanカンファレンス2018で、株式会社プロノバ代表取締役社長である岡島 悦子氏が登壇されました。
大好物は変化!と話すビジネス界のゴットマザー岡島氏は「新時代・リーダー・スポーツコーチ・イノベーション・変化」をキーワードにビジネスの視点からコーチングのこれからを語って頂きました。
ライフサイクル・ビジネスサイクルの変化に伴うヒトの変化
「何歳まで働きますか?」
会場「70歳!」
今の時代、人間は100歳まで生きるんですよね。では、皆さん70歳で働くのを辞めたら残りの30年間どう生きますか。恐らく、皆さんは80歳くらいまで働かないといけないんですよね。
このように今、ライフサイクルはどんどん変化しています。そして、ビジネスサイクルもまた変化してきています。
例えば、「富士フィルム」という会社は創業当初は主にカメラの製造を行なっていました。しかし今では、カメラから化粧品、また医薬品の開発の製造をしています。
このように、同じ会社に務めていても、業種が変わること・ビジネスサイクルが変化することなんて容易に考えられるんですよね。この変化は必ずこれからも続いていきます。
そこで、「全ての人が変化し続ける」ということが必要になります。これはスポーツにおけるコーチも同じだと思うんですよね。それも楽しんで変化すること。
例えば、スポーツコーチングに置き換えると、自分が一生同じ立場のコーチでいるのか、それともある程度経験を積んだらコーチを育成する立場(Coach Developer)に変化していく方がいいのかを考える必要があると思うんですよね。

株式会社プロノバ代表取締役 岡島悦子氏
新時代のリーダーシップの変化
では、なぜそこまで「変化」にこだわるのでしょう。
現在、人類は社会の成熟期の中で生きています。言い換えると、下りエスカレーターに乗っている状態です。つまり、私たちはこの時代を普通に生きていると、どんどん下へ下へと降ろされていくのです。だから、自分の足で変化し続けなければ後退の一方を辿るだけなんですよね。
では、これからどの様なリーダーが求められるのでしょうか。それは、カリスマ型リーダーシップではなく、羊飼い型リーダーシップです。
この羊飼い型リーダーシップとは、「環境を整備して、それを見守るリーダー」ということです。
具体的にはリーダーはメンバー(部下)が切磋琢磨しながら試行錯誤できる環境や情報が縦横無尽に行き渡る様な環境を作るということ。
また、組織に“新たな2つの文化”を作ることも羊飼い型リーダーの役割です。
まず1つ目は、「善意の失敗は全然心配ない!失敗してなんぼ!」という文化。2つ目は、「信頼」の文化です。
例えばビジネスでは、メンバーで切磋琢磨しながら仮説を作り、試行錯誤しながら全員で良いものを作ってみて、失敗を恐れずにとにかくお客さんに当ててみる。そして、失敗をして全員でまた試行錯誤してお客さんのニーズを捕まえに行くという「とにかく挑戦してみて、その中から勝てそうなものを見つけて行く」という考え方。
スポーツにおいても、その選手が今までこのポジションをやってきたからという理由でポジションを決定するのではなく、本当に各選手がそれぞれの好きなプレーが思い切りできるように編成を変えてあげること・挑戦する機会を作ってあげることなどが羊飼い型リーダーの具体的な行動になると思います。

良いリーダーの共通点
私の経験上、良いリーダーに共通している点がいくつかあります。
それは、「本当に素直な人、自己効力感のある人、好奇心を持っている人、努力し続ける方法を持っている人」です。
自己効力感のある人は未来の自分に自信を持っている人ということです。この自己効力感を高めてもらうためには小さな成功体験や、修羅場に送ってみて一皮剝ける経験を積ませることが必要です。
好奇心を持っている人は新しいことや知らないことに対して貪欲に学び続けられます。また、彼らは変化できる柔軟性も兼ね備えています。
努力し続ける方法を持っているという点ではスポーツ選手などは一流アスリートになるために様々な努力をしてきているはずです。だから、特にアスリートは何らかの努力し続けられる方法を持ってると思うんですよね。
このような共通点は時に必然を生む偶然、偶然を生む必然を作り出します。だから、経営者やコーチはこのような特徴を持つ人たちをリーダーに抜擢して、とにかく打席に立たせてみることが大切だと思います。
新時代のリーダーが起こす「破壊的イノベーション」
羊飼い型リーダーがするべきイノベーションがあります。それは、「破壊的イノベーション」です。
成熟期を生きる私たちはすでにある程度の問題は改善して、その改善も、もうし尽くしてきたと言っても言い過ぎではないんですよね。すでに今あるものを改善しているだけでは、他の企業に負けてしまいます。だから、今までの概念や方法を180度変えてしまうような「破壊的イノベーション」が必要なのですよね。
ビジネスの場合、経営のやり方や業界の構造そのものを変えるというようにプロセスを変えることが必要なんです。何か問題が生じた時にそれを小分けにして結果と原因を分析して改善するという方法からは「破壊的イノベーション」や「革新的なアイデア」は生まれないんですよね。
破壊的イノベーションを作り出すためには「変化上等、変化はおいしい」という考えを第一に持つことなんですよね。

岡島 悦子
株式会社プロノバ代表取締役社長
経営チーム強化コンサルタント、ヘッドハンター、リーダー育成のプロ。三菱商事、ハーバードMBA、マッキンゼー、グロービス・グループを経て、2007年プロノバ設立。アステラス製薬株式会社、株式会社丸井グループ、ランサーズ株式会社、株式会社セプテーニ・ホールディングス、株式会社リンクアンドモチベーションにて社外取締役。世界経済フォーラムから「Young Global Leaders 2007」に選出。著書に『40歳が社長になる日』(幻冬舎)他。
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