なぜ空手の指導を始めたのか
私が空手の指導を始めたきっかけとしては、中学生の時の恩師の影響が強いです。恩師からは正しい努力をすること、感謝を忘れないことなどを教わり、空手道という競技を通して人として成長することの大切さを教わりました。
人として成長するために私は、私生活を改善するようになり日々無駄な時間はないか自分の時間が目標に向いているか考えるようになったことが今でも癖として残っています。
このような経験から教育(指導)に興味を抱き、現在教育に関わる仕事をしています。
点と点をつなぐきっかけになれば良い
全ての物事には共通して大事なことがあることに気づき、それを選手に伝えたかったという想いがあります。何よりもその人のような他者に影響力を持ち、人を変えることのできる人物になることに興味を持っています。
指導の目的
人としての成長(入り口は勉強でもスポーツでも良い)において大事なこと。それは自分が取り組むことを通して、その子の今後の人生を意識し、そのことをやっていてよかったと思われるような指導を行うことです。そのためにゴールを数年先に設定することはとても重要です。
ゴールを設定することの重要性
下記のような記事はスポーツのゴールを「勝つ」という面だけにフォーカスすると起こってしまうのではないかと考えています。
『甲子園優勝校の主将が強盗逮捕 野球エリートを転落から「救う道」はなかったのか』
多くの指導者が子どもの幸せと言いながら、その幸せを現在に設定してしまいます。もちろん今が大切なのはわかりますが、中学生や高校生はあくまで子どもというのは忘れてはいけないと思っています。
人間として思春期という自分の人生に疑問を抱き、大人に反抗し、自分の意見を形成していく時期でもあります。そのため、幸せを将来に設定する必要があるのではないかと私は考えています。
自分たちが変わること
指導をしていると「なぜ子どもたちは変わらないのだろう」と無意識に思ってしまうことも多いでしょう。しかしそれでは指導者として成長しないと感じています。
指導者として成長するために大切なことは、なぜ変えることができないのだろうという視点を持つことだと考えています。
自分の思った通りに子どもを動かせると思っているのはただのエゴに過ぎないと考えているからです。いつだって子どもの成長のために指導者がサポートをしていくべきだと私は思います。
指導者という言葉
私は指導者という言葉が好きではないです。指導者という言葉が使われる時って、ある集団内で前に出てみんなを率いるというイメージがあるのではないでしょうか。
私はそんな指導者が理想ではなくて、「支導者」の方が正しいと考えています。
あくまで主体は子どもにあり、子どもが決めた目標に向けて進み、熱くなっている時はあえて冷ませる方向にもっていき、盛り上がっていない時は声を出させるように仕向ける。
今仕向けると書いたのは、あくまでその状態を指摘するのは子どもということです。リーダーを呼んで「今の状況を見てどう思う?」などと聞いてみます。すると意外にも自分が考えていた方向に気づいてくれるのです。支導者は、子どもが何かを感じる一歩先を読むように、子ども表情や動きに目を向け、そして子どもたちに気づかせ修正させていく。
私はそんなことができる支導者になることが今の目標なのかもしれません。
スポーツ指導の先に
なぜスポーツを教えるのか?勉強の方が役に立つかもしれないが、なぜそこまで子供はスポーツをやるのだろうか。
そこには、勉強では学ぶことができない何かを学ぶことができるからだと考えています。スポーツの素晴らしいこととは、日々自分と向き合うことだと私は思っています。
スポーツでは、自分自身の身体、メンタルなどに目を向けて、自分を知らなければ当然勝つことはできません。そのため、自分を知ることができることはスポーツをやるメリットではないでしょうか。
勉強では他者と比較をすることが多く、偏差値などの指標で何かと向き合うことが多いです。一方で、スポーツは自分自身と向き合うことのできる最強のツールだと私は思っています。自分自身と向き合うことのできるツールであることは、スポーツの最大の魅力なのかもしれないと感じています。
空手コーチとしての取り組み:目標を立てさせる
全国の目標、関東の目標、全中予選の目標。個人、団体それぞれ目標は異なります。そのためになにをすべきかを考えさせることは大切でしょう。一年目は何もわからない子が多数で、自分の経験を話したのが印象的です。
ここで大切なのは、自分たちでどれくらいか決めさせることです。市民大会など様々な大会を通してどれくらい伸びたかを把握させるためです。コーチとしては、選手自身に行動させて月一回のミーティングを行いました。
このようなやり取りの中で、空手のコーチとして選手自身に目標を立てさせています。
空手コーチとしての目標設定:PDCAの確認。
コーチとしては、本当に目標が達成できていたのかなどを子どもに確認させることが大切だと思っています。ここで大切なことは子ども自身に確認させることがとても大切だと考えています。
選手は嘘をついて良く見せたがりますが、嘘をついても仕方がないということを説明することが大切です。子供たちにとって普段は、怒られないために報告をします。しかし、すでに選手自身で目標を立てているので、コーチである私に対して報告するのではなく、選手自身が立てた目標に選手の意識が向くように指導しています。
選手は、決めてからは楽しそうにやるものの少しずつ「飽き」の状態が訪れます。言わなくても毎日できていない子どもが出てくる。
大会(市民大会などの比較的小さい大会)での取り組み
私は結果が出ていても基本的に小さい規模の大会では叱ることが多いです。なぜならば、本当に目標に対して取り組むことができていたのか確認させるためです。
「本当にできていたのか?」と選手に対して発問すると泣きながらできていなかったと話す子どもが出てきます。「できていた」と答える子どもに対しては、「100%できていたかどうか?」などを指導しています。
空手コーチとしての叱るポイント
コーチが叱る選手の多くは、あいさつなど当たり前のことが当然のようにできていない選手が多いです。
日本一になる選手はどんな対応をとると思うかなどを考えさせることで、なぜあいさつをするのかなど他者の目線に立って考えさせることができます。
この時に、コーチとしての言葉がけとして「あいさつをしろ!!」というのではなく、選手にとって客観的な視点を意識させることがとても大切です。
選手がなぜあいさつをするのかなどが理解できれば、組織として動くことの大切さが身につき、将来リーダーシップを発揮することが期待できるからです。
先輩任せ、他人任せになっている時には、自分の環境を自分で変えるという意識を持たせています。勝てないのは環境のせい、監督のせい、親のせいなど自分自身の結果を人のせいにさせないためです。
選手が自分の環境を自分で変えるという意識を持つことで選手の顔つきに変化が現れ、行動に変化が出てきます・選手が先輩の姿を観察したり、人と違う行動をしたりとその子の個性が少しだけ見えてきます。
トップアスリートの本を読ませる
スポーツ選手の本を読ませることは選手にとってとても大切です。目的としてはスポーツに対する当たり前の価値観の変革を促すことです。
「親に言われて」「指導者に言われて」という考えから実際に勝ち続けているアスリートの本を読むことでアスリート志向に近づけます。コーチ自身が出来なくても本は立派な「メンター」の役割を果たしてくれると私は考えています。
河野翔一(こうのしょういち) 東京都出身。國學院大學卒業。 祖父の影響で小学校一年生から空手道を習い始める。全国中学生空手道選手権大会、全国高等学校空手道選抜大会の団体型の部で 優勝し、「教える」「教わる」という行為に無限の可能性があることを学ぶ。大学で教育について学びながら 出身の道場で「日本一のチームを作る」ことを目標に指導を始め、23 歳でその目標を達成。現在都内私立学校 で教員をやりながら、スポーツを通した人間としての成長を広める活動をしている。
河野翔一氏のその他の記事は下記の2つです。併せて参考にしてみてください。
スポーツコーチ同士の学びの場『ダブル・ゴール・コーチングセッション』
NPO法人スポーツコーチング・イニシアチブではこれまで、長年スポーツコーチの学びの場を提供してきました。この中で、スポーツコーチ同士の対話が持つパワーを目の当たりにし、お互いに学び合うことの素晴らしさを経験しています。
答えの無いスポーツコーチの葛藤について、さまざまな対話を重ねながら現場に持ち帰るヒントを得られる場にしたいと考えています。
主なテーマとしては、子ども・選手の『勝利』と『人間的成長』の両立を目指したダブル・ゴール・コーチングをベースとしながら、さまざまな競技の指導者が集まり対話をしたいと考えています。
開催頻度は毎週開催しておりますので、ご興味がある方は下記ボタンから詳しい内容をチェックしてみてください。
ダブル・ゴール・コーチングに関する書籍
NPO法人スポーツコーチング・イニシアチブでは、子ども・選手の『勝利と人間的成長の両立』を目指したダブル・ゴールの実現に向けて日々活動しています。
このダブル・ゴールという考え方は、米NPO法人Positive Coaching Allianceが提唱しており、アメリカのユーススポーツのスタンダードそのものを変革したとされています。
このダブル・ゴールコーチングの書籍は、日本語で出版されている2冊の本があります。
エッセンシャル版書籍『ダブル・ゴール・コーチングの持つパワー』
序文 フィル・ジャクソン
第1章:コーチとして次の世代に引き継ぐもの
第2章:ダブル・ゴール・コーチ®
第3章:熟達達成のためのELMツリーを用いたコーチング
第4章:熟達達成のためのELMツリー実践ツールキット
第5章:スポーツ選手の感情タンク
第6章:感情タンク実践ツールキット
第7章:スポーツマンシップの先にあるもの:試合への敬意
第8章:試合への敬意の実践ツールキット
第9章:ダブル・ゴール・コーチのためのケーススタディ(10選)
第10章:コーチとして次の世代に引き継ぐものを再考する
本格版書籍『ダブル・ゴール・コーチ(東洋館出版社)』
元ラグビー日本代表主将、廣瀬俊朗氏絶賛! 。勝つことを目指しつつ、スポーツを通じて人生の教訓や健やかな人格形成のために必要なことを教えるために、何をどうすればよいのかを解説する。全米で絶賛されたユーススポーツコーチングの教科書、待望の邦訳!
子どもの頃に始めたスポーツ。大好きだったその競技を、親やコーチの厳しい指導に嫌気がさして辞めてしまう子がいる。あまりにも勝利を優先させるコーチの指導は、ときとして子どもにその競技そのものを嫌いにさせてしまうことがある。それはあまりにも悲しい出来事だ。
一方で、コーチの指導法一つで、スポーツだけでなく人生においても大きな糧になる素晴らしい体験もできる。本書はスポーツのみならず、人生の勝者を育てるためにはどうすればいいのかを詳述した本である。
ユーススポーツにおける課題に関する書籍『スポーツの世界から暴力をなくす30の方法』
バレーが嫌いだったけれど、バレーがなければ成長できなかった。だからこそスポーツを本気で変えたい。暴力暴言なしでも絶対強くなれる。「監督が怒ってはいけない大会」代表理事・益子直美)
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数えきれないほど叩かれました。
集合の際に呼ばれて、みんなの目の前で顔を。
血が出てたんですけれど、監督が殴るのは止まらなかった……
(ヒューマン・ライツ・ウォッチのアンケートから)
・殴る、はたく、蹴る、物でたたく
・過剰な食事の強要、水や食事の制限
・罰としての行き過ぎたトレーニング
・罰としての短髪、坊主頭
・上級生からの暴力·暴言
・性虐待
・暴言
暴力は、一種の指導方法として日本のスポーツ界に深く根付いている。
日本の悪しき危険な慣習をなくし、子どもの権利・安全・健康をまもる社会のしくみ・方法を、子どものスポーツ指導に関わる第一線の執筆陣が提案します。
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