【Spiral Eye #1】日本の学校部活動育ちでは、オリンピックでメダルは獲得できない?!

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新連載「Spiral Eye」

この連載では、現役の体育教師かつコーチの筆者が、スポーツを様々な観点から分析していきます。複雑に絡み合いながらできているスポーツ界の螺旋構造をより良い方向に導いていくための方法を探ります。

初回のテーマは、「オリンピックメダリストの育ち方」。

夏季五輪のメダル種目を分析し、その競技でメダリストが育つ要因を挙げていきます。世界と互角に戦える日本のアスリートは、どんな環境で育つのか、スポーツの歴史とともにお伝えします。

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日本が過去の夏季五輪で獲得したメダルの種目別内訳を見ると、以下の表のようになる。

オレンジで網掛けしてあるのは、民間のクラブでの育成が主流な種目だ。

日本のメダル獲得は少数精鋭種目

表を見てまずわかるのが、全体の1位である柔道と2位のレスリングといった格技で獲得したメダルの数が多いことだ。

柔道は1964年の東京五輪から採用され五輪種目としては新しいが、日本発祥のスポーツということで、日本は多くのメダルを獲得し世界でも優位な位置に立ち続けてきた。

また、両種目とも近年女子の活躍が顕著で、女子の活躍がメダルの数に大きく貢献している特徴がある。

しかし、日本のお家芸・柔道とはいえ、近年の少子化の流れの中で柔道人口は減り続け、2017年度における全国高体連登録者は男女合わせても1万9931人であり、15年前の登録者の56%にまで減っている。

また、高校体育の授業において武道を必修としてきた学習指導要領も変更され、柔道を体育の授業で教える学校は減ってきた。

レスリングの場合はさらに少なく、2017年度の男子の高体連登録者は2290人で、女子登録者は311人だけだ。15年前の男子2789人と比べても男子は82%の人数である。

これは登録者数上位で毎年約16万人が登録している野球やサッカーのわずか1.5%ほどの数だ。実際、日本各地の高校を見渡しても、ほとんどの学校に野球部やサッカー部はある。

しかし、レスリング部はない学校がほとんどである。このように底辺が狭く、トップレベルが高いという極端な形の少数精鋭構造の格技種目が過去に日本代表として多くのメダルを獲得してきたのが現状だ。

メダルの要因はジュニア期の指導

そのような環境の中でも日本の柔道やレスリングが世界のトップレベルであり続けている要因には、ジュニア期の指導の充実があげられる。

これらの種目において、五輪でメダルを獲るレベルの選手は、民間のクラブで子どものころから育成段階を過ごし、将来につながる正しい技術指導を専門のコーチや経験のある両親から受けてきたことはよく報道されている。

このことは、メダル獲得3、4位の体操、水泳についても言えること。

幼いころから始めたほうが有利な種目においては、民間のクラブで優秀な専門家の指導を受けたかどうかが、将来の伸びにつながり、五輪のメダルへと結実してきたと言えよう。

私たちは一般的に、高校の部活動や大学のクラブで活躍する選手の姿を見れば、学校の部活動が五輪選手を輩出し、五輪メダルに結びついたと考えてしまいがちである。

しかし、このように五輪でのメダル獲得を分析してみると、基礎の部分をしっかりと指導できるプロのジュニア指導者があってこそ、高校や大学、そしてシニアでの活躍につながったと考えるほうが妥当であろう。

 日本が過去に獲得した五輪のメダルは、柔道、レスリング、体操、水泳の4種目で全体の78%を占める。

これらの種目のほとんどが学校部活動ではなく、民間のクラブでジュニア期を過ごして育てられた選手が獲得してきた構図が日本の五輪メダル獲得の歴史なのである。

もちろん、日本のスポーツにおいて、学校部活動出身の選手が日本代表となり、日本のスポーツに貢献してきたと考えることに異論はない。

ただ、より高度なレベルの争いとなってきている五輪のメダル争いにおいては、日本一になり五輪選手になることと、世界の選手に競り勝ち五輪でメダルを獲得するまでに力を伸ばす過程には高い壁があると言わざるを得ない。

現在、曲がり角に来ている日本の学校部活動であるが、分け隔てなく子どもたちの心身の成長を促し、甲子園や駅伝などの大会では多くの人々の感動を呼んできた世界に誇れるシステムであろう。

学校部活動に熱心に取り組む子どもたちの、五輪でメダルを獲得したいという夢を叶えてあげられるようなジュニア期のスポーツ環境の整備を、これからの日本に期待したい。

後編はこちら

コラムニスト プロフィール 

田邊潤 (たなべ・じゅん)

早稲田大学本庄高等学院教諭。同校陸上競技部を31年間指導。関東大会、インターハイの常連で埼玉県の強豪校として知られる。1957年生まれ。早稲田大学教育学部卒、筑波大学体育研究科大学院修士課程修了。専門は陸上競技で走り高跳び国体8位。早稲田大学研究員としてアメリカや中国に滞在し、ジュニアの指導法や健康法を研究。早稲田大学非常勤講師。日本陸上競技学会、日本スプリント学会に所属。

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第5章:スポーツ選手の感情タンク

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第7章:スポーツマンシップの先にあるもの:試合への敬意

第8章:試合への敬意の実践ツールキット

第9章:ダブル・ゴール・コーチのためのケーススタディ(10選)

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バレーが嫌いだったけれど、バレーがなければ成長できなかった。だからこそスポーツを本気で変えたい。暴力暴言なしでも絶対強くなれる。「監督が怒ってはいけない大会」代表理事・益子直美)
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数えきれないほど叩かれました。
集合の際に呼ばれて、みんなの目の前で顔を。
血が出てたんですけれど、監督が殴るのは止まらなかった……
(ヒューマン・ライツ・ウォッチのアンケートから)

・殴る、はたく、蹴る、物でたたく
・過剰な食事の強要、水や食事の制限
・罰としての行き過ぎたトレーニング
・罰としての短髪、坊主頭
・上級生からの暴力·暴言
・性虐待
・暴言

暴力は、一種の指導方法として日本のスポーツ界に深く根付いている。
日本の悪しき危険な慣習をなくし、子どもの権利・安全・健康をまもる社会のしくみ・方法を、子どものスポーツ指導に関わる第一線の執筆陣が提案します。

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