ダブル・ゴール・リーグへの想い~渋川工業高校野球部小泉健太氏~

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2020年10月11日~11月22日の間で群馬県にて行われた「勝利」と「人間としての成長」の2つのゴールを目指した教育の場「Double Goal League2020 in Gunmma」。

発起人の群馬県立渋川工業高校野球部監督の小泉健太氏を取材した内容をお送りします。

アメリカでの経験とダブル・ゴール・リーグを立ち上げたきっかけ

アメリカでのスポーツコーチングを間近で見た経験のある小泉氏。アメリカでの経験とダブル・ゴール・リーグの立ち上げのきっかけについてお聞きしました。

アメリカと日本の違いは関係性

私もアメリカに行ったときに日本とアメリカの何が違うんだってなったときに、指導者の考えていることとか、持ってるノウハウとかはそんなに変わらないけど、リレーションシップ(選手とコーチの関係性)ってうのが天と地ほど違って、そこだけだなって思ったんですよね。

例えば、パワハラ・暴力・体罰・理不尽な上下関係って、全部関係性の問題じゃないですか。だから、日本がやろうとしていることは間違っていないと思うんですよ。勝つために全力でチームプレーで、送りバントで犠牲するんだとか。

別にそれは勝つためには正しいことだけど、それを強制してしまっている、ミスしたら叱る、押し付ける。この関係性だけがクリアされれば、やっていることは素晴らしいしやっていることとか甲子園にいくことだって「ナイス!」ってなるんですよ。

でも甲子園行くために、権威的な指導者が何かをやらせるってことがやっぱり違うんですよね。甲子園目指すことは正しいし、勝つことは正しい、ということをアメリカで感じました。

ダブル・ゴール・リーグを立ち上げたきっかけ

——それがダブルゴールリーグを立ち上げたきっかけに?

そうですね。自分のコーチングとアメリカで学んだことをいかにフィードバックするのかと考えた時に、こういう取り組みをしようと思いました。この大会の中では高圧的な指導をしないというルールのもと指導者と一緒に取り組むよい機会にしています。

今後のダブル・ゴール・リーグへの想い

——今後ダブル・ゴール・リーグはどういう方向に進んでほしいってありますか?

野球人口が減ってしまって、今中学校でも単独でチーム組めない学校がたくさんでてきています。そういう中で、僕自身は野球から色々教わって、野球を教える立場にいる身として、今まで無視してきた部分を変えたいと思っています。

甲子園が全てで、甲子園にいけなかったらダメだっていう考え方とか、甲子園にいけないなら(いきたくないなら)辞めてもいいよっていう部活のあり方とか、スポーツクラブのありかたがちょっと見直されて、もう1回スポーツの魅力を伝えて、スポーツを好きにさせて、ちょっとずつステージを踏んで成長していくっていう感じになるといいなと感じています。

そういう意味で、野球の楽しさを再認識することと、人として育つことも忘れないということを指導者とか野球界全体が再認識できるといいなと思います。

——ダブル・ゴール・リーグを受けた子供はどんな感想をもっていますか?

生徒にとっては、もしかしたらダブル・ゴールという考え方はピンときていなくて、3校で集まってリーグ戦をすること自体が楽しいんじゃないですかね。イベントみたいな感じで修学旅行や球技大会みたいな感じのリーグ戦でちょっと選手の心に刻まれるかなーみたいな。でもそんなもんでいいとおもうんですよね。

でも選手が将来「あれってなんだったんだっけな」って大人になったときに、何かダブル・ゴールとかいってたなとか、あの時俺ら仲良くなったなみたいなそういう感じでいいんじゃないかなみたいな。

僕も学生時代の時の練習試合まで覚えているかっていわれたら全く覚えてないんですよ。なので、頭の片隅に、小泉先生があんなこといってたなとか、ダブル・ゴールが大事とかいってたなとか、野球だけできればいいんじゃねぇんだとか、ちょっと頭をかすめてくれれば、今の選手がこどもができて少年野球とかのコーチになったときに、多分迷うと思うんですよ。

今は何も考えてないけど、いざ少年野球のコーチやるってなったら「え、どうしているんだろう普通のコーチ達って」ってなったときに思い出すのが、僕だと思うんですよね。そうすると、あ、こういうことかみたいな感じで、ピシピシくるみたいな。

——選手たちのグッドモデルになるみたいなイメージですかね。

そうですね。グッドモデルというか思い出したときに何か残ればいいかなっていう。

—―ありがとうございます。僕らがやりたいことって本当にそこで、今いる指導者の人たちがかわることで子供達に良いお手本を見せて、子供達がコーチになったときに、教わったコーチングをもとにもっと学んでもっとブラッシュアップしていくみたいなのがあります。それを体現していただいているのが、小泉さんを始め、共感してくれているコーチの方々だと思います。

小泉氏自身の選手時代と今のコーチングへの想い

答えがないから高校野球の名将の人たちと話しても、答えはないから、知れば知るほど、わからなくなる、勉強するほど分からなくなる。だけど学び続けなきゃいけない。それが教育の世界ですよね。

いかに気づかせるか、仕掛けをつくって、気づかせるか。いうことだけが気づかせることじゃないですからね。言わないことも気づきにつながりますからね。

僕の高校の時の監督の松本先生はグダグダなゲームで試合自体がダメなのが選手でもわかるようなレベルでも、バッティング調子悪いからバッティング練習しようーってだけでおわって帰っていくんですよ。でもキャプテンがいや、違うだろ、集まれって、なってキャプテンが中心になって先生が帰った後にミーティングするみたいな。

相手のチームのビデオとかも自分たちで研究して、キャプテンや副キャプテンを中心に解説してみたいな。そういうことを経験しているからこそ、選手に任せることは任せて自分たちがやってる感じをもたせて、自分で動こうとする。俺がやってrからお前らもついてこいだと、そういう感じにはならないですよね。

そういう仕掛けを作りたいなと、小泉先生何もいわないじゃん、全然だめじゃんじゃなくて、子供達がやったことですけど何か問題ありますか?っていうスタンス。そういう仕掛けがつくれればいいなと思います。

ダブル・ゴール(ROOTS:フェアプレーの精神)のワークショップを選手に受けてもらって

—―本日のワークショップは選手に受けてもらってどう感じましたか?

教師目線で見ると、難しい英単語とか並んでくるとおそらく頭の中には入っていないだろうなと感じてしまうんですが、そこはお二人とも理解していて、ワークショップ形式でやっていたのが良かったと思います。

利根実業の生徒と渋工(渋川工業高校)の生徒と3校の生徒が交流したことで印象に残ったんじゃないかなと思います。異質な空間だったので。

あの話(ROOTS)の話もこの間Zoomで聞いた話(ダブル・ゴール・コーチングセミナーで聞いた話)を私が話することもできたのですが、外の人がきてくれて、環境をつくってやった空間というのが非常によかったなと思います。

また、お二方が気を使ってアドバイスをあげながら、フレンドリーに「若いお兄さん」がやってくれているっていうのが良かったとも思います。どうしても教師という立場だと、話ちゃんと聞けとかってなりがちなので、いろんなところを気を使わずに裸でできたんじゃないかなって思います。

—―英単語並べると、わかんないだろうなっていう、ダブル・ゴールもわからないだろうなって。でも前提として何か一つでもみんなでやったっていうのがあればいいなと思って

そうですね。それこそ感情タンクとかELMとかの話は渋工の子たちにはよく話をしているんですよ。

感情タンクとかの言葉は使わないですけど「嫌なこととか聞くとやる気なくなっちゃうだろ」とかはよく話をしているので、「先生が言ってることってこういうことなんだ」って思っただろうし。

ELMのところも、努力すること、成長すること、失敗から学ぶこと、立ち上がることはよく見てあげてナイスっていってやろうぜって話をしてるので、「はっコレのことか!」って思っただろうと思います。

こういったことを専門的な見地で話をしてくれて、日頃の私の指導の裏付けをしてくれてありがとうございました。

小泉 健太(こいずみ けんた)
1988年生まれ(現在32歳)前橋市出身で専門種目は野球。県立前橋から東京学芸大学へ進学し投手として活躍。
二葉養護学校・館林高校定時制の勤務経験を経て、 現在渋川工業高校(監督4年目)保健体育科教諭として活動中。

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