コミュニケーションの方法を変えるだけで相手との関係がどんどん良くなる!

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現在はコミュニケーションの方法はインターネットや書籍などから簡単に得られて、実践しやすい環境と言えます。

しかし、実際に使っているものの期待している程の効果を実感出来ていない方も少なくないでしょう。

本来コミュニケーションは「自分のメッセージを伝える方法」です。

しかし、褒める・叱るなどに代表されるコミュニケーションのテクニックを使う事そのものが目的になってしまい、本来のコミュニケーションに含まれているポイントが見落とされている可能性が考えられます。

コミュニケーションを通して伝わるメッセージの見落としが原因で、スポーツ指導やコーチングを通して選手に伝えたいメッセージが伝わっていない、または誤解を与えてしまっていると感じた経験もあるかもしれません。

上記のような経験がある方に向けて、本記事で今実践しているコミュニケーションの方法をより良くして、相手との関係をよくする為のアイディアを紹介します。

コミュニケーションには言葉以外のやり取りも含まれている

まず、「コミュニケーション」はバーバルコミュニケーション(言語を用いたコミュニケーション)とノンバーバルコミュニケーション(言語以外のコミュニケーション)の2つに大別出来ます。

今回はノンバーバルコミュニケーションに焦点を当てます。

「ノンバーバル」に含まれている要素は、表情や声のトーンなどに加えて、立ち振る舞いやジェスチャーなど言葉以外の部分からメッセージが得られる要素が含まれます。

ノンバーバル(非言語)コミュニケーションに含まれている要素

Hall、Horgan、Murphy(2019)は、ノンバーバルの要素として、下記を挙げています。

  1. 身体的特徴
  2. 性別
  3. 話し手の社会性、性格、バックグラウンドといった個人に関わる情報
  4. 会話中のムード、声色

3. の例としては、話し手(指導者)の指導や競技歴、所属しているチーム、などです。

元プロ選手という肩書きがあると、それだけで思わず耳を傾けてしまうような経験がその1つとして挙げられます。

また4. の場合、笑顔で明るく「大丈夫」と言われた時と、苦笑いをしながら少し低めのトーンで言われた「大丈夫」では、伝わってくる印象が違う様子が想像出来ると思います。

このような言葉以外の要素から伝わるメッセージのやりとりが「ノンバーバルコミュニケーション」です。

これらは普段使っているコミュニケーションの方法にも含まれていますので、自分が伝えたいメッセージに合ったノンバーバルのメッセージを意図的に活用することで、よりメッセージが伝わりやすくなります。

あなたのコミュニケーションの方法は選手のモチベーションに大きな影響を与えている

指導者が選手のモチベーションを高めるように接しているものの、思ったほど選手がやる気を持ってプレー出来ていない、というケースは多くの指導者が経験しているかもしれません。

このケースで考えられるのは、指導者が選手のことをコントロールし過ぎてしまっていることです。

指導者の態度(coaching behavior)は選手の練習態度や考え方だけでなく、特に選手のモチベーションに大きな影響を与えます。

それがポジティブな影響であれネガティブな影響であれ、指導者から発信されているノンバーバルなメッセージを受け取っています。

選手の自由を奪ってしまうコミュニケーションはモチベーションの低下を招く

Pelletierらの研究(2001)では、指導者の態度によって選手のモチベーションのタイプ(内発的・外発的動機)に影響がある事が報告されています。

指導者が選手の自律性を重んじるコミュニケーション(autonomy support)をしていると、選手は内発的または必要性を感じた上で取り組むような動機づけがされている傾向が見られました。

一方で指導者が選手を一方的にコントロールするようなコミュニケーションの方法を使っていた場合、選手は指導者からやらさていると感じていた傾向が強く、選手によってはその競技を辞めてしまうケースも報告されています。

また、HassanとMorgan(2015)の研究では、コーチが選手に自由に目標設定、振り返り、自主練習などを行えるようなアプローチをしたという調査を行っています。

結果としては、選手が自ら取り組むモチベーションを保てたのに対して、それらをコーチが決めてしまうアプローチをした場合、選手は練習をやらされていると感じる傾向があったことを報告しています。

自分としては選手のモチベーションを高める為に接したにも関わらず、選手があまりやる気を持ってプレー出来ていないと感じたら、選手に対してどのような態度で接しているかを見直してみるといいかもしれません。

自律性を重んじるコミュニケーションのポイント

自分が自律性を重んじる接し方が出来ているかどうか、振り返るべきポイントを2つ紹介します。

選手の選択を尊重している

選手が自分とは違った選択をした場合、「こっちの方がいいと思う」と自分の意見を言ってしまうこともあると思います。

ですが、指導者の意見を渡してしまうと選手の選択は横に置いて指導者の意見に従ってしまうこと多くなりがちですので、まずは選手の選択を尊重しましょう。

ミスした時に学びを促している

指導者と違った選択をした結果、ミスする場合もあるかもしれません。その場合はそのミスから何を学んだかを聞いてみる事で、選手がミスした事を前向きに捉える事が出来ます。

「言った通りにしなかったからミスしたんだ!」と自身の言った事が正しかったと強調してしまうと、選手が次から自分で選択するのを恐れる原因にもなりかねません。

自分の態度を改めるには、日々の振り返りが効果的

自分の態度が選手の自主的な選択を重んじているかどうかを日々指導後に振り返ること(reflection:リフレクション)で、自分の取り組みから多くの事を学ぶ事が出来ます。

これは学習全般にも言える事で、科目学習に限らずスポーツや趣味など何かを学んだ際の学習効果を深めるには、学習後の振り返りが役に立ちます。

その日の指導態度やコミュニケーションの方法を振り返って、「今日は意識して選手の話を最後まで聴く事が出来た。」「よくよく振り返ると、選手が決めた事に自分の意見を被せてしまった。」といった具合に、出来るだけ客観的に自分の態度がどうだったかを振り返ってみます。

その振り返りを基に、次の指導で具体的に取り組むプランを考えてみましょう。

段階的に振り返りをする方法

Knowlesら(2006)は、コーチの振り返りの実態について調査をして、コーチに対して効果的な振り返りの方法を紹介しています。

段階的に振り返る

振り返るべきポイントを段階的に広げて自分が気づける範囲を広げていきます。

第一ステップでは、自分自身の立ち振る舞いや表情など自分の身体面について振り返ってみます。

第二ステップでは、選手との関係などの対人関係がどうであったに気を配ります。

そして第3ステップでは、自分の態度から発せられていたメッセージについて考えていきます。

段階的に振り返ることで、自分が気づける範囲が広がり振り返りが充実していきます。

コーチングスタッフや同僚と一緒に振り返りをする

振り返りをする上で一番問題になるのが時間的な制約を感じてしまうことです。

Knowlesらの研究でも多くのコーチが振り返りの重要性を認めている一方で、時間がかかる点を気にしてしまい前向きに取り組めていない事が報告されています。

そこで、同じチームのコーチングスタッフと一緒にその日の取り組みについて振り返る時間を設定して、必要な練習として位置付けて取り組むのも方法のひとつです。

初めのうちは義務感で取り組む形にはなりますが、振り返りの効果や価値も同時に認識しながら取り組むことで、次第にミーティング以外で自主的に振り返る機会も増えてくることが期待出来ます。

また、選手と一緒に指導者自身がその日の振り返りをする事で、チーム全体での練習の一部として捉える機会を作り出すことも可能です。

まとめ

「コミュニケーション」はバーバルとノンバーバル(非言語)の要素があり、言葉以外の態度、表情、立ち振る舞い、接し方などを通して多くのメッセージが発信されています。

これらは、普段使っているコミュニケーションの方法にも含まれています。

相手との接し方や態度は相手のモチベーションに大きく影響しています。選手の選択を尊重してコントロールしすぎない接し方をすることで、選手のモチベーションを高めるようなコミュニケーションに繋がります。

そこで、振り返りを通して自分自身の相手とのコミュニケーションの方法を見直して、より良い態度へと変化させる取り組みをしていきましょう。

このノンバーバルの部分の変化によって、今活用しているコミュニケーションの方法を通して伝えたいメッセージを見直してみましょう。

より意思疎通の取れたコミュニケーションが取れるようになることが期待出来ます。

参考文献

Hall, J. A., Horgan, T. G., & Murphy, N. A. (2019). Nonverbal communication. Annual Review of Psychology(70), 271–294.

Hassan, M. F. H., & Morgan, K. (2015). Effects of a mastery intervention programme on the motivational climate and achievement goals in sport coaching: A pilot study. International Journal of Sports Science & Coaching, 10(2-3), 487-503.

Knowles, Z., Tyler, G., Gilbourne, D., & Eubank, M. (2006). Reflecting on reflection: Exploring the practice of sports coaching graduates. Reflective Practice, 7(2), 163–179.

Pelletier, L. G., Fortier, M. S., Vallerand, R. J., & Briere, N. M. (2001). Associations among perceived autonomy support, forms of self-regulation, and persistence: A prospective study. . Motivation and Emotion, 25(4), 279–306.

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ABOUTこの記事をかいた人

略歴 2007年東海大学理学部情報数理学科卒、2009年東海大学体育学研究科体育学専攻修了。東海大学大学院では実力発揮と競技力向上の為の応用スポーツ心理学を学ぶ。 2014年8月よりテネシー大学運動学専攻スポーツ心理学・運動学習プログラムに在籍。スポーツ心理学に加え、運動学習、質的研究法、カウンセリング心理学、怪我に対するスポーツ心理学など幅広い分野について学ぶ傍ら、同プログラムに所属する教員・学生達のメンタルトレーニングを選手・指導者へ指導する様子を見学し議論に参加する。 2016年8月より同大学教育心理学・カウンセリング学科の学習環境・教育学習プログラムにて博士課程を開始。スポーツスキルを効率良く上達させる練習方法、選手の自主性を育む練習・指導環境のデザインについて研究している。学術的な理論や研究内容に基づいた実践方法を用いて、日本・アメリカのスポーツ選手に対して実力発揮のメンタルスキルの指導とスポーツスキル上達のサポートも積極的に行なっている。