「良いケンカ」をしてチームを強くしよう(日本アーチェリー協会理事 守屋麻樹氏)

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ぶつかるだけではダメ、話し合うこと

—— 「チームがまとまる」とは、具体的にどのような状態なのでしょうか?

チームビルディングについて、タックマンモデルという概念があります。チームは最初から良いチームがあるのではなく発達段階がある、という考え方です。

第一段階は、ただ人が集まりみんなが様子をうかがっている段階。だんだんとコミュニケーションにはこうしたいという願望や意見が出てくる。

この次に、「ストーミング・混乱期」という言いたいことを言ってぶつかり合う段階になります。ここで重要なのは、ぶつかるだけでは意味がなく、自分たちが何を望んでいてそれには何が必要なのかを話し合うことです。

それを経て第三段階で、リーダーが自然発生したり、ルール作りや役割分担したりと内部が活発化します。その中で小さな成功体験を積み、第四段階で結びつきの強い段階に行き着くんです。

チームビルディングの理論である「タックマンモデル」

多くの段階では第一段階から第二段階になる時に悩みが生じますが、そこでいかにコミュニケーションを増やしていくかが大事です。

ストーミングをどういう形で起こさせるかという点は、チームによって違うし、コーチや監督は工夫する必要がありますね。目標は「良いケンカ」をさせることですね。

—— 何か問題が起きたときに「チームを良くするチャンスにしよう」と思うことが大事かもしれませんね。

この間私たちのアーチェリー部でも(※守屋さんが率いる早稲田大学アーチェリー部では、その年の幹部を中心に、選手自らが出場メンバーの選考基準やメンバー編成を決定している)最後の公式戦のメンバーを決める際に、この間も選手たちが長い時間をかけて自分たちの思いをぶつけ合いながらミーティングを行ったんですね。

そのミーティングを経たことで、出場する選手は責任を感じることができ、出場できなかった選手も心から応援することができるんじゃないでしょうか。この積み重ねが「チーム力」になるのではないかと思います。

—— そういった意味では、チームが負けたときも良い転機になりますね。

やるべきことしていながらも勝てない時と、していなくて勝てない時がありますよね。やるべきことをやらずに勝てないのは当たり前なので、その場合は勝利するために必要な要素を選手に考えさせるようにアプローチします。

十分にやっていながら負けてしまった時には、敗北の重要性について声をかける事が多いですね。努力を認めつつも、勝利に至らなかった「何らかの理由」を見つけて次に活かそうと声をかけます。

具体的な手法ですが、なぜ負けたか全くわからないという時、特にその敗北がシーズンの序盤の場合には「この時点での敗北には何か意味がある」と表現して、今後チームを強く固めていくための材料として活かしますね。ただの偶然として流すよりも、重く受け止めた方がチーム力アップにつながると思いますね。

そして何より、良い敗北は、改めて目標設定をする良いチャンスになります。どこを目指しているのか、そのために何が必要なのか、振り返るための良い材料となるので、監督やコーチにはぜひそこも意識して欲しいですね。

ーー 大人数でのチーム運営で意識すべきことはありますか?

全員と面談のような形式で話ができれば理想的だけれども、その時間を取れないこともあると思うので、少なくとも全員を見ているというメッセージを発信することは重要だと思います。

チームの人数が増えるほど試合に出れない選手の人数も増えることになるので、2軍以下の選手もしっかりと評価対象であることを伝えると、選手個人のモチベーション維持やチーム全体の良い雰囲気作りに寄与できると思います。

守屋麻樹(ローレルゲート株式会社代表取締役/NPO法人コーチ道理事)

スポーツコーチ同士の学びの場『ダブル・ゴール・コーチングセッション』

NPO法人スポーツコーチング・イニシアチブではこれまで、長年スポーツコーチの学びの場を提供してきました。この中で、スポーツコーチ同士の対話が持つパワーを目の当たりにし、お互いに学び合うことの素晴らしさを経験しています。

答えの無いスポーツコーチの葛藤について、さまざまな対話を重ねながら現場に持ち帰るヒントを得られる場にしたいと考えています。

主なテーマとしては、子ども・選手の『勝利』と『人間的成長』の両立を目指したダブル・ゴール・コーチングをベースとしながら、さまざまな競技の指導者が集まり対話をしたいと考えています。

開催頻度は毎週開催しておりますので、ご興味がある方は下記ボタンから詳しい内容をチェックしてみてください。

ダブル・ゴール・コーチングに関する書籍

NPO法人スポーツコーチング・イニシアチブでは、子ども・選手の『勝利と人間的成長の両立』を目指したダブル・ゴールの実現に向けて日々活動しています。

このダブル・ゴールという考え方は、米NPO法人Positive Coaching Allianceが提唱しており、アメリカのユーススポーツのスタンダードそのものを変革したとされています。

このダブル・ゴールコーチングの書籍は、日本語で出版されている2冊の本があります。

エッセンシャル版書籍『ダブル・ゴール・コーチングの持つパワー』

序文 フィル・ジャクソン

第1章:コーチとして次の世代に引き継ぐもの

第2章:ダブル・ゴール・コーチ®

第3章:熟達達成のためのELMツリーを用いたコーチング

第4章:熟達達成のためのELMツリー実践ツールキット

第5章:スポーツ選手の感情タンク

第6章:感情タンク実践ツールキット

第7章:スポーツマンシップの先にあるもの:試合への敬意

第8章:試合への敬意の実践ツールキット

第9章:ダブル・ゴール・コーチのためのケーススタディ(10選)

第10章:コーチとして次の世代に引き継ぐものを再考する

本格版書籍『ダブル・ゴール・コーチ(東洋館出版社)』

元ラグビー日本代表主将、廣瀬俊朗氏絶賛! 。勝つことを目指しつつ、スポーツを通じて人生の教訓や健やかな人格形成のために必要なことを教えるために、何をどうすればよいのかを解説する。全米で絶賛されたユーススポーツコーチングの教科書、待望の邦訳!

子どもの頃に始めたスポーツ。大好きだったその競技を、親やコーチの厳しい指導に嫌気がさして辞めてしまう子がいる。あまりにも勝利を優先させるコーチの指導は、ときとして子どもにその競技そのものを嫌いにさせてしまうことがある。それはあまりにも悲しい出来事だ。

一方で、コーチの指導法一つで、スポーツだけでなく人生においても大きな糧になる素晴らしい体験もできる。本書はスポーツのみならず、人生の勝者を育てるためにはどうすればいいのかを詳述した本である。

ユーススポーツにおける課題に関する書籍『スポーツの世界から暴力をなくす30の方法』

バレーが嫌いだったけれど、バレーがなければ成長できなかった。だからこそスポーツを本気で変えたい。暴力暴言なしでも絶対強くなれる。「監督が怒ってはいけない大会」代表理事・益子直美)
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数えきれないほど叩かれました。
集合の際に呼ばれて、みんなの目の前で顔を。
血が出てたんですけれど、監督が殴るのは止まらなかった……
(ヒューマン・ライツ・ウォッチのアンケートから)

・殴る、はたく、蹴る、物でたたく
・過剰な食事の強要、水や食事の制限
・罰としての行き過ぎたトレーニング
・罰としての短髪、坊主頭
・上級生からの暴力·暴言
・性虐待
・暴言

暴力は、一種の指導方法として日本のスポーツ界に深く根付いている。
日本の悪しき危険な慣習をなくし、子どもの権利・安全・健康をまもる社会のしくみ・方法を、子どものスポーツ指導に関わる第一線の執筆陣が提案します。

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