選手を勝利に導き人生の勝者にも導くダブル・ゴール・コーチング~学びを促す~

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選手を勝利に導き人生の勝者にも導くことが、ダブル・ゴール・コーチングのコンセプトです。選手がスポーツにおいて試合で結果を出し、人生の勝者となるために選手の学びを促すコーチングをダブル・ゴール・コーチングでは非常に大切にしています。

本記事では、ダブル・ゴール・コーチングのコンテンツの一部である学びを促すコーチングについて詳しく解説します。

選手の学びを促すことは自主性を高める

選手の学びを促すことは、選手の自主性を高めるため自ら考え行動し成長できる選手を育てることにつながります。

逆にスポーツコーチが指摘しなければ、練習をしない・プレーができない選手は試合中の判断力があまり高くないため、試合中のパフォーマンスが低く勝つ可能性は低くなります。

例えば、筆者は専門競技がサッカーなのでサッカーを取り上げますが、試合中に指示をださないと動けない選手と、自分で適切な判断ができる選手は、どちらがパフォーマンスとして高いでしょうか。

逆にクローズド・スキルのスポーツ(陸上や水泳)などの場合では、自主性の高い選手と低い選手ではどのような違いがあるでしょうか。

そして、自主性がある選手と自主性があまりない選手が社会人となったとき、どちらのほうが社会として求められる人材に成り得るでしょうか。

実際に日本スポーツ協会1)が掲げているグッドプレーヤー像の1つとして「何事に対しても、自ら考え、工夫し、行動できる人」が挙げられています。

そして、グッドプレーヤーを育てるスポーツコーチが果たす役割として「単に指導対象者のパフォーマンス向上や健康・体力の維持増進を支えるだけにとどまらず、スポーツを通じた総合的な人間力の向上(人格形成)、さらにはスポーツの意義と価値を守り育て未来へ継承していくという広範囲にわたる」ことが提言されています。

スポーツコーチの指導方法は選手の自主性に影響する

スポーツコーチの指導方法は、選手の自主性に影響を及ぼすことがスポーツ科学の研究領域では明らかにされています。

例えば、倉藤他2)の研究では、スポーツコーチのリーダーシップタイプと選手の自主性に関して調査を行っています。

スポーツコーチのリーダーシップタイプに関する調査では、下記の4つにタイプを分けています。

  1. PMタイプ:競技成績と部内の関係維持のどちらも重視した指導者
  2. Pタイプ:部内の関係維持よりも競技成績を重視した指導者
  3. Mタイプ:競技成績よりも部内の関係維持を重視した指導者
  4. Pmタイプ:競技成績と部内の関係維持のどちらも重視しない指導者

また、選手の自主性に関しては、下記の6つに自主性を分けています。

  1. 自己統制:自己の欲望に一方的に支配されることなく、その支配から自己を適切に守ろうとする傾向
  2. 独創性:他社とは異なったユニークな存在としての自己を追求すること
  3. 自己主張:自己の価値が他者に認められようとする努力、自己の真の価値を実現しようとする客観的条件が整った場合重要な特性となる
  4. 独立性:他者に不当な依存をすることなく、行動し生活すること、依存構造の発展として捉えられる
  5. 判断力:自己が直面する事態を多方向から分析し、合理的な行動の仕方を見出して適切に対処していくこと
  6. 他者によって統制された行動ではなく、自己自身の内的欲求に基づいて自発的に行動する傾向

結果として、PMタイプのコーチングは選手の判断力と自発性を高める可能性があることが報告されています。この自発性のある選手を育てることは、グッドプレーヤー像の1つとして掲げられている「何事に対しても、自ら考え、工夫し、行動できる人」を育てる上では、欠かせないでしょう。

自発性を育む上では選手自身の成長度が大切

スポーツコーチとして、選手の自発性を育む上でダブル・ゴール・コーチングでは、他者との比較するのではなく選手自身が過去から現在まででどんな変化があったかを大切にしています。

選手として他者と比較されて評価されてしまうことは、選手が無意識的にコントロールできないことに目を向け始めてしまいます。

選手にとって、他の選手の成長や行動はコントロールできることではありません。コントロールできることは、あくまで自分自身の努力であり、学ぶことです。

つまり、選手自身の努力や学びを促すことは、自発性を高めるため自主性が高まり「自ら考え行動し成長できる選手」の育成につながるのです。

そして、自主性のある選手ほどスポーツパフォーマンスだけではなく、学校の成績も高くなり、仕事の生産性も高く人生の勝者となる可能性が高まります。

選手の学びを促すコーチング方法とは?

選手の学びを促すダブル・ゴール・コーチングでは、ELMツリー(Effort/Learning/Mistakes are Ok)を軸として、自分自身のコーチング方法を確立することを大切にしています。

下記では、そのダブル・ゴール・コーチングのELMツリーを軸としたコーチング方法の具体例を紹介します。

選手の行動を褒めて学びを促す

選手の行動を褒めることは、選手の学びを促します。ここであえて選手の「行動」とした理由は、結果を褒めるということではないからです。

結果がすべてだからこそ過程が大切!その理由とは?

こちらの記事でも解説しましたが、選手の行動(過程)を褒めることで、選手のチャレンジ精神(成長マインドセット)を育み、結果的に勝利にもつながるのです。

例えば、選手が一生懸命プレーをした時に、どのようなことを褒めますか?

選手の行動を褒めることでとても大切なこととしては、一生懸命「良いプレー」をしたことを褒めるのではなく、「一生懸命プレー」をしたこと自体を褒めてあげるのです。

一生懸命プレーしたことを褒めることで、選手が一生懸命プレーすることを成功体験として感じやすく、積み重なった成功体験は選手の学びにもなり、結果にもつながります。

成功体験が結果につながる理由と方法

選手自身が成し遂げたい目標を設定してもらう

選手自身が成し遂げたい目標を設定してもらうことは、選手の学びを促す上では欠かせません。選手が目標に対して、自己分析をし、行動したあと改善したときに、選手が学ぶ姿勢を養うことができます。

特に、選手が目標に対して行動したこと自体を褒めてあげることで、選手が目標に対して努力して改善すること自体を楽しめるようにもなるため、結果的にパフォーマンスが高まり勝利にもつながるのです。

目標を立てて行動をし、改善をして再び目標を立て直すといったサイクルをPDCAサイクルと言ったりしますが、このサイクルを回すことが身についた選手は、社会人になったときでも自然と努力をして学び人生も豊かにしていくことができるようになるでしょう。

このように、目標を設定してもらうことは選手のPDCAサイクルを回すきっかけになるため、学びを促しパフォーマンスも向上させることにつながります。

目標設定に関しては下記のレポート記事でも詳しく報告しておりますので参考にしてみてください。

主体性を高める練習の質とは?―スポーツコーチング・ラボvol.17―

まとめ

選手の学びは自主性を高めます。自主性といってもふわっとしてしまいますが、スポーツコーチの指導方法や選手に対する関わり方によって、自発性を高めることにつなげることができます。

特に、選手の行動を褒めたり、選手自身が成し遂げたい目標を設定してもらったりすることによって、選手の学ぶ姿勢を養うコーチングにつながります。

本記事を参考に、スポーツコーチングをより良くする一助になれれば幸いです。

参考引用文献

1)公益財団法人 日本体育協会(2016).コーチ育成のための「モデル・コア・カリキュラム」作成事業報告書.

2) 倉藤利早,田島誠,米谷正造(2011),指導者のリーダーシップタイプが選手の自主性に及ぼす影響 川崎医療福祉学会誌,20(2):457-460.

スポーツコーチ同士の学びの場『ダブル・ゴール・コーチングセッション』

NPO法人スポーツコーチング・イニシアチブではこれまで、長年スポーツコーチの学びの場を提供してきました。この中で、スポーツコーチ同士の対話が持つパワーを目の当たりにし、お互いに学び合うことの素晴らしさを経験しています。

答えの無いスポーツコーチの葛藤について、さまざまな対話を重ねながら現場に持ち帰るヒントを得られる場にしたいと考えています。

主なテーマとしては、子ども・選手の『勝利』と『人間的成長』の両立を目指したダブル・ゴール・コーチングをベースとしながら、さまざまな競技の指導者が集まり対話をしたいと考えています。

開催頻度は毎週開催しておりますので、ご興味がある方は下記ボタンから詳しい内容をチェックしてみてください。

ダブル・ゴール・コーチングに関する書籍

NPO法人スポーツコーチング・イニシアチブでは、子ども・選手の『勝利と人間的成長の両立』を目指したダブル・ゴールの実現に向けて日々活動しています。

このダブル・ゴールという考え方は、米NPO法人Positive Coaching Allianceが提唱しており、アメリカのユーススポーツのスタンダードそのものを変革したとされています。

このダブル・ゴールコーチングの書籍は、日本語で出版されている2冊の本があります。

エッセンシャル版書籍『ダブル・ゴール・コーチングの持つパワー』

序文 フィル・ジャクソン

第1章:コーチとして次の世代に引き継ぐもの

第2章:ダブル・ゴール・コーチ®

第3章:熟達達成のためのELMツリーを用いたコーチング

第4章:熟達達成のためのELMツリー実践ツールキット

第5章:スポーツ選手の感情タンク

第6章:感情タンク実践ツールキット

第7章:スポーツマンシップの先にあるもの:試合への敬意

第8章:試合への敬意の実践ツールキット

第9章:ダブル・ゴール・コーチのためのケーススタディ(10選)

第10章:コーチとして次の世代に引き継ぐものを再考する

本格版書籍『ダブル・ゴール・コーチ(東洋館出版社)』

元ラグビー日本代表主将、廣瀬俊朗氏絶賛! 。勝つことを目指しつつ、スポーツを通じて人生の教訓や健やかな人格形成のために必要なことを教えるために、何をどうすればよいのかを解説する。全米で絶賛されたユーススポーツコーチングの教科書、待望の邦訳!

子どもの頃に始めたスポーツ。大好きだったその競技を、親やコーチの厳しい指導に嫌気がさして辞めてしまう子がいる。あまりにも勝利を優先させるコーチの指導は、ときとして子どもにその競技そのものを嫌いにさせてしまうことがある。それはあまりにも悲しい出来事だ。

一方で、コーチの指導法一つで、スポーツだけでなく人生においても大きな糧になる素晴らしい体験もできる。本書はスポーツのみならず、人生の勝者を育てるためにはどうすればいいのかを詳述した本である。

ユーススポーツにおける課題に関する書籍『スポーツの世界から暴力をなくす30の方法』

バレーが嫌いだったけれど、バレーがなければ成長できなかった。だからこそスポーツを本気で変えたい。暴力暴言なしでも絶対強くなれる。「監督が怒ってはいけない大会」代表理事・益子直美)
ーーーーー
数えきれないほど叩かれました。
集合の際に呼ばれて、みんなの目の前で顔を。
血が出てたんですけれど、監督が殴るのは止まらなかった……
(ヒューマン・ライツ・ウォッチのアンケートから)

・殴る、はたく、蹴る、物でたたく
・過剰な食事の強要、水や食事の制限
・罰としての行き過ぎたトレーニング
・罰としての短髪、坊主頭
・上級生からの暴力·暴言
・性虐待
・暴言

暴力は、一種の指導方法として日本のスポーツ界に深く根付いている。
日本の悪しき危険な慣習をなくし、子どもの権利・安全・健康をまもる社会のしくみ・方法を、子どものスポーツ指導に関わる第一線の執筆陣が提案します。

NPO法人スポーツコーチング・イニシアチブについて

スポーツコーチング・イニシアチブ

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