パフォーマンス心理学で「勝利」と「人間的成長」の実現を目指す-伴元裕-

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メンタルパフォーマンスコンサルタント 伴元裕 

「パフォーマンス心理学」と出会い「勝利」と「人間成長」の実現を目指すメンタルのスペシャリスト

スポーツパフォーマンスコンサルタントである伴元裕は、社会人時代に出会った上司のある言葉をきっかけに「パフォーマンス心理学」を海外で本格的に学んだ。

そして、現在は様々な現場でメンタルパフォーマンスコンサルタントとして活動する。

しかし、学生時代までは、自己肯定感が低くて「自分に価値を見い出せなかった」と明かした。

「パフォーマンス心理学」と出会ったことをきっかけに、どのような人生を歩んできたのだろうか。

野球、サッカーとスポーツに明け暮れた少年時代

子供のころから「ボールが友達」だったとどや顔で明かす。おそらくマンガキャプテン翼の影響だろうが、筆者はスルーした。特定のスポーツにのめり込むというより、部活のメンバーで入部を決めるところがあり、野球、サッカー、そして再び野球と競技種目を変えながら小中高時代を過ごすことになる。

大学でテニスから「パフォーマンス心理学」と出会う

大学進学後、それまでの野球・サッカーではなく、初めての個人スポーツとなるテニスを選択する。

高校時代の野球部に所属していた先輩から誘われる形だった。

「小学校から高校まで経験してきた野球やサッカーで培ってきたボール感覚とフットワークが生かせるスポーツ」と、テニス対して前向きに取り組んでいた。

「初めてテニスをやってみて、すごくうまくできた。周りから驚かれたので、俄然やる気がでた」

テニスに対して、手ごたえを掴んでいたものの、ある悩みが生まれた。

「練習でできるプレーが試合でできない」

テニスから「心の持ち方」の大切さを知った。

「まさに試合で持てる力を遺憾なく発揮する術を研究しているのがパフォーマンス心理学。たまたま本を通じて知ることができた。心理学は大学で専攻していたわけではなく、テニスを通して知ることになった」心理学を、独学で積んでいった。

「試合での実力発揮は自分だけの悩みではなく、誰にとっても課題であること。そして、それは克服できるものであることも学んだ。」と話す。

しかし、このタイミングで将来を決めていたわけではなかった。

「単純にテニスは楽しいと思ったし『心』は面白い。テニスにのめりこみ、大学2年生から卒業するまでテニスコーチのバイトをしていた。選手としても、結果を残すことができるようになり、メーカーから用具を支給してもらえるまでになる。『心』にアプローチすることで、結果を残せることがわかり、練習でできていたことが、試合でもできるようになっていった」とテニスが様々な出会いをもたらしてくれたようだ。

「お前がそこにいた価値を残せ」

大学卒業後、商社に就職する。

「シンプルに飛行機にたくさん乗れる仕事をしたい」を考えていた。商社で7年間働いていたが、現在の姿に通ずる大きな経験をすることになる。

商社に入社後、ある上司の部下として働くことになる。

「上司は、教育者みたいな存在。そのおかげで、自分の人生がこんなに楽しいと思わせてくれた」とその上司に感謝する。

7年後、商社を退職することになるが、退職するまで上司は変わらなかったこともプラスに働いていた。

仕事を通じて、その上司から口癖のように聞かされていた言葉がある。

「お前がそこにいた価値を残せ」

商社マンは、商品を売るメーカーさんと購入したいお客さんの仲介役なので、別にいなくても商売は成立する。

しかし、商社マンとして「そこにいた価値」を見出さないといけないということだ。

「商社マンは、別に何か意味が無ければ、ここにいる意味が無いような職業。『この人がいたから、このビジネスがうまくできて、そこに関わったみんなが幸せになった』ということを残さないと、商社としての利益を生み出せない」

商社マンとして、常に存在価値を求められていた。

「自分の個性を使って、この人たちに役に立つようなあり方を探せ」と上司からずっと言われていたようだ。

商社に入社した頃「自分が残せる価値というものは何だろう」と困惑する。

それがわからないことから、ストレスにもなっていた。

しかし、上司の下で小さいながらも成功体験を重ねることができてきて「自分という人間の存在価値があると実感できた」と話す。

7年間商社マンとして働きながら、自分の興味や個性を発見し、生きていきたい道が見えてきた。

しかし、学生時代までは思うようにできていなかったようだ。

「私は、末っ子で、優秀な兄貴が2人。直接、親からは言われなかったが、出来が悪いと自分で思っていた」と学生までは、自己肯定感が低かったことを明かす。

「高校時代は出来が悪い生徒の親だけが校長先生に呼び出されて、公開で説教を受けることもあった。母親が『息子がこんなに馬鹿だと思わなかった』と先生の前で泣きながら話をしているのを見て、私は『価値がないダメな人間だな』と。自分を否定するほどに、自分なんてと良くなろうと思えなかった。勉強をしたいと思えなかったし、振り返るとしんどい時代だった。しかし、大学に入ってからテニスと出会い、社会人でそういう上司と出会い、ちょっとずつ自分の存在価値を感じられるようになった」

暗黒の時代を経験し、テニスと上司の出会いを通じて、自分自身で変化を実感していた。

そして、商社マンでありながら、大学院進学を目指して計画的に動き出すことになる。

パフォーマンス心理学を学ぶためにアメリカ・デンバー大学の大学院へ

「ある時、会社の同期が心の病で休職せざるを得ない状況になった。本人や家族、その仲間が胸を痛めることはもちろん、チームや会社としてもマンパワーを失う痛手で、誰も得しないわけで。幸福感とパフォーマンスの両立ができるソリューションはないかなと考え始めたんですね。そこで行き着いたひとつの答えが、良い上司を増やすことでした。」

商社時代に7年間仕えた上司の存在。

「シンプルにこういう上司みたいな人が、もっと世の中に増えたら良いな。考えた瞬間も覚えている」とその時のことは忘れない。

デンバー大学の大学院で「パフォーマンス心理学」を学ぶきっかけになった。

パフォーマンス心理学は「人間の機能をどのように高められるかという学問」だとし、これをスポーツで応用したのが「スポーツ心理学」なのだ。

パフォーマンス心理学を2年間学んだ後に、日本へ帰国。現在は、メンタルパフォーマンスコンサルタントとして、スポーツチームや企業のコンサルタントという形で、外部からサポートをする仕事をしている。

「私はメンタルコーチとして選手に直接関わることもあり、コーチ含めチームをサポートする人でもある。選手や対象になる人が『自分にはこんな価値も見い出せそうだな』と思える情報取集や環境づくりを大事にしている。褒めるとかおだてるという話ではなくて、全ての人間に個性や興味があって。その価値をより高めるための戦略と遂行を客観的にサポートする存在だと捉えている。」

過去に「暗黒の時代」を経験した上で、様々な出会いから「パフォーマンス心理学」を学びながら、メンタルパフォーマンスコンサルタントとしての基礎を築いてきた。さらに、コミュニケーションについても聞いてみると、このような答えが返ってきた。

「心を探求して行動に移していくアプローチをインサイドアウトという。選手には、自分のニーズや感情を探求してもらうように心がけている。こうすべき、こうあらなきゃいけないという義務感は意欲を生みにくい。また、この結果を出さなくてはならないという義務感に囚われると、自分に足りてないものに意識が向いてしまう。私がコミュニケーションを通して目指すことは、どんな未来が来たら嬉しいのかというWillから派生した目標を持ち、それがどうしても達成したくなるまで定着してくるようにすること。そうなってくれば、目標達成するために使える自分のリソースや個性、特徴を探し始める。つまり、すでにあるものに意識がいくようになる。自分が生み出したい価値は何か。これを引き出すインサイドアウトの関わり方に気を付けている」

様々な人に対して「パフォーマンス心理学」から、自身の体験も踏まえて、価値を見出すことの大切さを訴えていた。

「勝利」と「人間成長」の両方を実現させることが大事

「子どもの発達の研究が進むなかで、スポーツが健康や人間的成長を促すことがわかってきている。スポーツは数少ない意欲と集中が両立する成長チャンスである。しかしながら、せっかくの成長チャンスに大人が出てきて、『勝つことが全て。俺の言うことに従え』というケースがある。勝つこと自体は成功体験であり、また、勝利を目指すことはより良くなることを促し、とても重要なことに間違いはない。ただ、勝利が至上で、勝つためには手段を選ばない、成長は二の次という勝利至上主義は、選手の意欲を奪い、成長を妨げる。」

これらの考えを踏まえて、勝利至上主義からの脱却がキーワードとなる。

勝ちを目指すのは大前提だが、自分の価値を気づかせることが大事。

人の成長よりも勝利を優先させることは、本当の良い指導ではないと考える。

「人間成長と勝利を両方実現できるようにする『ダブル・ゴール・コーチング』という考え方が、長い目で見れば良い指導方法と思う。そして、現場で当たり前になるところまで落とし込めるかが勝負」と今後の展望を明かす。

メンタルという言葉は、以前に比べると浸透できているようにも見えるが、アプローチなど細かい部分は、まだまだのようだ。

「勝利」と「人間成長」の両方を実現させることができるメンタルコーチとして「そこにいた価値」を現場に残すため、日々奮闘する。

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スポーツコーチ同士の学びの場『ダブル・ゴール・コーチングセッション』

NPO法人スポーツコーチング・イニシアチブではこれまで、長年スポーツコーチの学びの場を提供してきました。この中で、スポーツコーチ同士の対話が持つパワーを目の当たりにし、お互いに学び合うことの素晴らしさを経験しています。

答えの無いスポーツコーチの葛藤について、さまざまな対話を重ねながら現場に持ち帰るヒントを得られる場にしたいと考えています。

主なテーマとしては、子ども・選手の『勝利』と『人間的成長』の両立を目指したダブル・ゴール・コーチングをベースとしながら、さまざまな競技の指導者が集まり対話をしたいと考えています。

開催頻度は毎週開催しておりますので、ご興味がある方は下記ボタンから詳しい内容をチェックしてみてください。

ダブル・ゴール・コーチングに関する書籍

NPO法人スポーツコーチング・イニシアチブでは、子ども・選手の『勝利と人間的成長の両立』を目指したダブル・ゴールの実現に向けて日々活動しています。

このダブル・ゴールという考え方は、米NPO法人Positive Coaching Allianceが提唱しており、アメリカのユーススポーツのスタンダードそのものを変革したとされています。

このダブル・ゴールコーチングの書籍は、日本語で出版されている2冊の本があります。

エッセンシャル版書籍『ダブル・ゴール・コーチングの持つパワー』

序文 フィル・ジャクソン

第1章:コーチとして次の世代に引き継ぐもの

第2章:ダブル・ゴール・コーチ®

第3章:熟達達成のためのELMツリーを用いたコーチング

第4章:熟達達成のためのELMツリー実践ツールキット

第5章:スポーツ選手の感情タンク

第6章:感情タンク実践ツールキット

第7章:スポーツマンシップの先にあるもの:試合への敬意

第8章:試合への敬意の実践ツールキット

第9章:ダブル・ゴール・コーチのためのケーススタディ(10選)

第10章:コーチとして次の世代に引き継ぐものを再考する

本格版書籍『ダブル・ゴール・コーチ(東洋館出版社)』

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子どもの頃に始めたスポーツ。大好きだったその競技を、親やコーチの厳しい指導に嫌気がさして辞めてしまう子がいる。あまりにも勝利を優先させるコーチの指導は、ときとして子どもにその競技そのものを嫌いにさせてしまうことがある。それはあまりにも悲しい出来事だ。

一方で、コーチの指導法一つで、スポーツだけでなく人生においても大きな糧になる素晴らしい体験もできる。本書はスポーツのみならず、人生の勝者を育てるためにはどうすればいいのかを詳述した本である。

ユーススポーツにおける課題に関する書籍『スポーツの世界から暴力をなくす30の方法』

バレーが嫌いだったけれど、バレーがなければ成長できなかった。だからこそスポーツを本気で変えたい。暴力暴言なしでも絶対強くなれる。「監督が怒ってはいけない大会」代表理事・益子直美)
ーーーーー
数えきれないほど叩かれました。
集合の際に呼ばれて、みんなの目の前で顔を。
血が出てたんですけれど、監督が殴るのは止まらなかった……
(ヒューマン・ライツ・ウォッチのアンケートから)

・殴る、はたく、蹴る、物でたたく
・過剰な食事の強要、水や食事の制限
・罰としての行き過ぎたトレーニング
・罰としての短髪、坊主頭
・上級生からの暴力·暴言
・性虐待
・暴言

暴力は、一種の指導方法として日本のスポーツ界に深く根付いている。
日本の悪しき危険な慣習をなくし、子どもの権利・安全・健康をまもる社会のしくみ・方法を、子どものスポーツ指導に関わる第一線の執筆陣が提案します。

NPO法人スポーツコーチング・イニシアチブについて

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