スポーツにおける勝利至上主義がもたらした社会的弊害

勝利至上主義とスポーツがもたらした、社会的弊害は大きいです。

なぜならば、スポーツ教育の価値は、思っている以上に大きな価値をもっているからです。

勉強は嫌々やる人は多いですが、スポーツはどうでしょうか。

勉強は嫌という人でも部活は好きという人は少なからずいるはずです。

本記事では、部活動によるスポーツ教育がもたらした社会・子ども教育への影響について解説します。

そもそも勝利至上主義って何?

勝利至上主義とは、勝利を絶対的な物事の判断とする価値観のことを指します。スポーツでは、勝ちを良いとする勝利至上主義とそうではないという反勝利至上主義があります。

関 1) は勝利至上主義を「スポーツは勝利を至上するものである」というテーゼとして定義しています。

つまり、勝利こそが正しくスポーツの理想的な姿という考え方を指します。

しかしながら、関の研究 1)では、スポーツの勝利と敗北に関して下記のように述べています。

”「そもそもスポーツは必ず「勝利」を生み出す一方、必ず「敗北」も生成する二項同体である。そのため一瞥すれば「勝利」と「敗北」は二項対立の構図のように見えるが、むしろ対立ではなく共存するものであり、スポーツが内在する基本的な機能そのものなのである”

つまり、スポーツ本来としての良さとは、勝利を善として追い求める勝利至上主ではなく、勝ちも負けもどちらもあるからこそ良いので、本来は勝ちにも負けにも優劣はないのです。

勝利至上主義は社会に多くの悪影響を及ぼしている

スポーツ教育における勝利至上主義は、社会に対して多くの悪影響を及ぼしています。

スポーツ庁の統計データによれば、平成16年度から毎年中学生男子の部活動参加率は75%を超えています。

つまり、若者の多くは部活動を経験しています。

この部活動というスポーツ教育がもたらした悪影響については下記の通りです。

勝利至上主義がもたらした悪影響①やる気のない子どもを育てた

勝利至上主義がもたらした悪影響として、やる気のない子どもを育てたことが挙げられます。

アメリカのギャラップ社が調査した結果によれば、日本人の従業員の仕事に対するやる気は、調査した139か国中132位と最下位クラスであったことが報告されています。

スポーツ心理学の観点からいえば、勝利至上主義は勝てばやる気になるものの負ければやる気がなくなります。

これは飴と鞭という言葉と同じように、勝利は飴で敗北は鞭です。

飴と鞭は、子どもの教育を長期的な視点でみたときに、やる気を育むことにはつながりません。

勝利至上主義がもたらした悪影響②生産性の低い子どもを育てた

勝利至上主義がもたらした悪影響として、生産性の低い子どもを育てたことも挙げられます。

これはやる気がない子どもを育てたことと関連しますが、やる気がないから生産性がなくなるということです。

2018年の日本生産性本部の報告書によれば、日本の1時間当たりの労働生産性は4733円で加盟36か国中20位、主要先進7か国中最下位という結果です。

飴と鞭を用いたやる気の育み方は、短期的なスパンにおいてのみ有効ですが、長期的かつ持続的なやる気を引き出すためにはかえって逆効果になってしまうためです。

やる気が仕事における生産性と関係していることは、社会心理学領域で多くのエビデンスが存在します。

つまり、勝利至上主義は、子どものやる気を育むどころか、やる気を殺いでしまうことで結果として仕事の生産性を低くしてしまうのです。

勝利至上主義がもたらした悪影響③幸福度の低い子どもを育てた

勝利至上主義がもたらした悪影響として、幸福度の低い子どもを育てたことも挙げられます。

この幸福度は、国連の関連団体が発表している調査結果で、様々な要素をもとに測定されています。

この中には1人当たりの国内総生産(GDP:24位)だけではなく、人生の選択の自由(64位)や寛容さ(92位)が含まれます。

特に、人生の選択を取り上げると、やる気・生産性と関係が深いことが心理学の観点から述べる事ができます。

子どもに選択肢を与えてやる気を高めよう

子どもに対して選択肢を与える事は、やる気を高めることができます。

このやる気は、生産性・幸福度も高めることができます。

子どもに対してやる気を高める方法については、心理学領域のやる気に関する研究の大家であるDeciの提唱している自己決定理論で説明することができます。

人のやる気は、自律性の高さ、自分が優秀であるという有能感の高さ、相手との関係の良さが関係しているとDeciは提唱しています。

この中でも自律性の高さは、人生における選択肢の自由と関係していて、親や教師、コーチ、上司に言われたからやるのではなく、自らが選択して行動することと関係しています。

自律的な子どもを育てることは、やる気の高い子どもを育てることにつながり、その子どもは生産性が高く、結果的に幸福度も高めるのです。

つまり、勝利至上主義はこのような子どもを育てることを阻害してしまっているのです。

スポーツ教育が担う未来のコーチング

スポーツ教育が担う価値は大きいです。なぜならば、勉強を嫌いな子どもはたくさんいますが、スポーツが嫌いな子どもは少ないからです。

しかしながら、勝利至上主義によるスポーツコーチングは本当にスポーツ教育に適しているでしょうか?

子どものやる気を育まず、仕事に対する熱意を下げて幸福度も下げるようなスポーツ教育で本当に良いのでしょうか。

社会は集団が集まって成り立ちます。

集団は1人が集まる事で集団になります。

その1人である選手・子どもを育てているスポーツコーチングを振り返るとどうでしょうか。

結果にばかりに目がいき、選手・子ども自身の成長につながっていないのではないでしょうか。

選手を育むアスリートセンタード・コーチング

選手を育む基本的な姿勢として、アスリートセンタード・コーチングがあります。

アスリートセンタード・コーチングでは、先にも述べた自己決定理論に基づいて、選手を第一に考えます。

選手を第一に考えて指導することによって、選手の実力も上がると考えているためです。

このアスリートセンタード・コーチングでは、教えることにとらわれず、選手に意思決定の機会をたくさん与えます。

つまり、選手・子どもに対して自由な選択肢を与えます。

勝利と人間的成長の両立を目指したダブルゴール・コーチング

子供たちがスポーツでも人生でも勝者となることを目指したダブル・ゴール・コーチングもあります。

ダブル・ゴール・コーチングは、アメリカのスポーツ指導者がライセンスを取得する際に学ぶカリキュラムの一部です。

ダブル・ゴール・コーチングでは、勝利至上主義脱却のための方法として多くのアメリカのユーススポーツ指導者がスポーツ現場で活用しています。

アメリカの場合は、ユーススポーツのスタンダードな指導方法となっていて、ダブル・ゴール・コーチングを学んでいないと大会に出場できなかったり、練習会場が借りられなかったりという制約があります。

体罰やハラスメントは、周りから非難されることも多いですが、実際にどのように子供や選手に接したら良いかわからないという人は、是非ダブル・ゴール・コーチングを学んでみてください。

まとめ

勝利至上主義がもたらした悪影響は多岐にわたります。1つ目としてやる気です。勝利至上主義はやる気のない人を育てます。

やる気のない人を育てた結果として、低い労働生産性と幸福度が調査結果として明らかになっています。

勝利至上主義とは対照的に、子どもに選択肢を与えるスポーツ教育は、今後の未来を大きく左右します。

子どもに選択肢を与えるようなスポーツコーチングには、アスリートセンタード・コーチングがあります。

また弊団体の活動の1つでもあるダブルゴール・コーチングは、その手助けになるでしょう。

本記事を参考にして勝利至上主義による人材の育成について一度振り返ってみてはいかがでしょうか。

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