2018年11月15日に二子玉川でコーチング・ラボvol.11が開催されました。今回は、メンタルスキルトレーナーの伴元裕氏による勝利と人間的成長は両立するのか?~勝利至上主義からの脱却~というタイトルで行われました。
今回取り上げる内容は、勝利至上主義から脱却するためのアスリートセンタードコーチングについてです。
勝利至上主義とは勝つことが判断基準になるコーチング哲学
初めに勝利至上主義とは、体罰を考える人がいるかもしれません。
しかしそうではなく今回の内容では、「勝利を最重要視した考え方」を指します。
つまり、勝利至上主義とは、試合に勝つことが判断基準になるようなコーチングに対する考え方を指します。
勝利至上主義は主体的な選手を育てない
勝利至上主義は主体的なスポーツ選手を育てることができません。
なぜならば、勝利至上主義は、外発的なやる気(モチベーション)を高めるコーチング方法であるためと伴氏は述べます。
この勝利至上主義を心理学の理論である自己決定理論と照らし合わせてみます。
自己決定理論は下記のような理論です。
自主性・有能性・関係性が満たされる時に人の内発的モチベーションは高まる
「自主性・有能性・関係性が満たされる時に人の内発的やる気(モチベーション)は高まる」ことが自己決定理論で心理学的に研究・理論づけがなされている3) と伴氏は述べます。
内発的やる気(モチベーション)とは、人が行動するための内から出る心理的なエネルギーを指します。
例えば、スポーツが楽しいからやりたいといったことや、自分が上達するのが楽しいといったことです。
その他にも生理的欲求や、外発的やる気(モチベーション)があることを伴氏は挙げました。
生理的モチベーションとは、寝る事や食べる事といった生理的な行動に対するやる気(モチベーション)を指します。
例えば、おなかがすいて食べ物を食べたい、眠たいから寝たいといったことは、生理的な行動に対するやる気です。
外発的モチベーションはお金や罰則といったことを獲得・回避するための行動におけるやる気(モチベーション)を指します。
例えば、お金が欲しいから仕事をするといったことや周りからモテたいからスポーツをするといったことです。
このような外発的やる気(モチベーション)は継続することが難しいことが心理学領域ではいわれています。
外発的要因で行動する選手はやる気が持続しない
勝利至上主義は、アスリートの外発的やる気(モチベーション)をベースにしています。
この勝利至上主義の問題点としては、外発的要因でやる気になる選手は、お金や罰則がなければ行動を起こさない・やる気が持続出来ないことです。
例えば、お金をもらうためだけにスポーツをしていたとしましょう。しかしながら、ある日突然お金をもらうことが出来なくなったとします。
この場合には、お金をもらうためだけにスポーツをしているため、当然のことながらスポーツを辞めるでしょう。
これは極端な例ではありますが、実際のスポーツ現場で例えてみると監督・コーチの怒る行動も含まれます。
「監督・コーチから怒られるから練習をする」といった選手は、監督・コーチが見ていない場所では練習をしないかもしれませんし、怒られなければ練習をしなくなります。
このように、外発的要因はやる気持続することにつながりません。
つまり、勝利至上主義によるスポーツコーチングはやる気のないスポーツ選手を育ててしまうという問題点をスポーツ現場にもたらしています。
主体的な選手を生み出すためのアスリートセンタードコーチング
アスリートセンタードコーチングとは、勝利ではなく選手のニーズを最優先したコーチングの考え方である1) と伴氏は述べます。
このアスリートセンタードコーチングは選手のニーズを満たす指導法であるため選手が競技、チームメイトや対戦相手などに尊敬の念を持つ傾向にあります。
アスリートセンタードコーチングについては、コチラの記事も参考にしてみてください。
新時代に求められる「アスリートセンタード・コーチング」(日本体育大学教授 伊藤雅充氏)
また、アスリートセンタードコーチングの考え方で指導を行うと、コーチと選手間の信頼感も高まる傾向にあることが報告されていると伴氏は述べます。
つまり、選手のスポーツに対する満足感だけではなく、選手から信頼されるコーチになることが出来るため、コーチとしての満足度も高まることが報告されています。
まとめ
勝利至上主義とは、勝つことが最優先となるコーチング哲学の1つです。この勝利至上主義は、外発的モチベーションを高めることから、自発的な選手を育成することが出来ません。
自発的な選手を育てるためには、内発的モチベーションを高めることが重要であり、アスリートセンタードコーチングというコーチング哲学が役に立ちます。
このアスリートセンタードコーチングは、アスリートのモチベーションを高めるだけではなく、選手の満足感やコーチとの信頼感も高めます。それ故にコーチ自身の満足度も高いです。
本記事を参考に、自分自身のコーチングに対する考え方を捉えなおしてみてはいかがでしょうか。
引用参考文献
1) Milbrath, Marshall. (2017). Athlete-centered coaching: What, why, and how. Track Coach. 218. 6939-6944. (米国陸上競技連盟)
2) Carol Dweck. (2006). Growth Mindset: The New Psychology of Success.
3) Edward Deci & Richard Ryan. (2015). Self-determination theory.
4) Daniel Pink. (2010). モチベーション3.0: 持続する「やる気」をいかに引き出すか. 大前研一訳.
5) USOC. (2017). Quality Coaching Framework.
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数えきれないほど叩かれました。
集合の際に呼ばれて、みんなの目の前で顔を。
血が出てたんですけれど、監督が殴るのは止まらなかった……
(ヒューマン・ライツ・ウォッチのアンケートから)
・殴る、はたく、蹴る、物でたたく
・過剰な食事の強要、水や食事の制限
・罰としての行き過ぎたトレーニング
・罰としての短髪、坊主頭
・上級生からの暴力·暴言
・性虐待
・暴言
暴力は、一種の指導方法として日本のスポーツ界に深く根付いている。
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